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このコーナーはMagPlusや雑誌の編集を担当するメンバーによるブログ。誌面だけでは伝えきれない話題をお届けします。

2012.07.13

【Report】第7回日本薬局管理学研究会年会

 日本薬局管理学研究会(会長・前田正輝望星薬局常務取締役)の第7回年会が6月24日,都内で開催されました。
 今年は「共同薬物治療管理」をテーマにしたシンポジウムが開催されたほか,米国のCDTMに造詣の深い中井清人氏(厚生労働省医薬食品局総務課課長補佐)による講演も行われました。

患者モニタリングと薬物治療の共同管理でシンポ

薬局で患者がHbA1cを自己測定

 北海道薬科大学の岡﨑光洋氏は,薬局で患者の健康状態や治療経過をモニタリングする観点からの取り組みを紹介。札幌市の二十四軒薬局はHbA1cの自己検査を店頭で行える仕組みを作り,患者が自ら血液を採取してHbA1c測定を行っているそうです。また,ドラッグストアや薬局を展開するサンキュードラッグ(北九州市)では,抗凝血薬を服用している患者を対象に凝血能の簡易検査を行っていることも紹介しました。
 さらに,厚生労働科学研究で臨床検査薬のOTC薬化に関する研究も行われていることを挙げ,薬物治療モニタリングの現場が薬局に拡がる可能性を示しました。

●岡﨑光洋氏

医師と共同で薬剤師が処方入力を代行

 京都桂病院薬剤科の土手賢史氏は,自身が担当している血液内科病棟でがん化学療法を受ける患者を対象に,支持療法に関する大まかな投薬のプロトコルを作成し,それに基づき土手氏が処方入力を行い,医師の承認後に調剤するという仕組みを導入していることを紹介しました。
 これにより,投薬までに要する時間が医師が処方を行うよりも短縮されたり,血糖降下薬の服用患者では血糖管理が良好になるなどの効果があったことを示しました。

●土手賢史氏

医師が予見できる範囲で幅のある処方を薬剤師の判断で投薬

 薬剤師資格を持つ弁護士の赤羽根秀宜氏は「CDTMにおける法的問題点とその解釈」と題し,米国CDTMの仕組みを日本で行う際の問題点や,2010年に出された厚生労働省医政局のいわゆる「チーム医療」通知の解釈について語りました。
 赤羽根氏は薬剤師が医師の処方そのものを代行することは医師法違反になるとの見解を示す一方,医師が予見できる範囲で幅のある処方を「プロトコル」として示し,その範囲で薬剤師が投薬することは「医師しか行えない危険な行為ではないと判断できる」との見方を示しました。
 一方,それを可能にするためには医師と薬剤師の信頼関係が前提となることや,プロトコルを文書合意することで両者の責任を明確化する必要性も合わせて指摘しました。

●赤羽根秀宜氏

薬剤師は「薬学的管理」とは何かを示すべき

 厚生労働省の中井氏は行政の人事交流で米国視察を行い,そこで薬剤師が患者を診察し投薬する様子などを目の当たりにし,日本で論文にまとめています。また,米国各州のCDTMの仕組みを調査した研究も行い,共著で論文にまとめるなど米国CDTMについて造詣が深い立場。同年会の時局講演では「薬剤師の職能の向上と我が国の医療の発展のために」と題し,今後の薬剤師が目指すべき方向性について熱く語りました。
 中井氏は米国CDTMについて,市場主義医療制度の中でもっとも費用対効果の面で効率的だったのがCDTMだったと分析。また英国で薬剤師や看護師が処方権をもっているのは,家庭医制度のなかで医師への受診に時間がかかることが背景にあると指摘しました。
 一方,日本の薬局薬剤師は「世界一高い評価」のフィーを受ける立場にあり,院外に処方箋を出すことで医療の質が向上したエビデンスを出すことが求められると指摘。2012年の診療報酬で「病棟薬剤業務加算」が導入された病院薬剤師については,薬剤師が病棟にいることのメリットを他職種が指摘するデータがあったことが報酬設定につながったことを挙げ,次は医療の質が向上するかどうかエビデンスを示す必要があると述べ,「エビデンスを作らなければしぼんでしまう」と警告しました。
 薬剤師の行為が医療の質を向上させたエビデンスの例として,中井氏は米国のアッシュビルプロジェクトを紹介。同プロジェクトについて,「米国はボトムアップの発想はなく,よい結果を出すモデルに補助金を出す。良いところをほめると回りがついてくる」と語り,先進的な取り組みをさらに伸ばす発想が成果を生んでいることを紹介しました。
 中井氏は,日本の薬剤師がこれからエビデンスを構築するなかで「薬学的管理とは何か」を確立してほしい,と期待しました。薬剤師に何ができるのかを確立し,薬剤師全員が「ここまでやる」のだと定義できるようにしたいと述べ,そのためのエビデンス構築に向けた取り組みを期待しました。

●中井清人氏

おまけ

 中井氏は米国で視察したHIS(インディアン・ヘルス・サービス)での薬剤師の活動を「薬剤学」の2005年5月号に掲載しています。
 また,講演でも掲示した米国各州のCDTMの概要一覧は,「医療薬学」2011年3月号に中井氏と河原敦氏(薬事コンサルタント)の共著で発表したミニレビューに掲載されています。
 これらは株式会社メテオの「メディカルオンライン」からも購入可能です(要会員登録)。

 「薬剤学」2005年5月号(65巻5号,248-252頁)

 「医療薬学」2011年3月号(37巻3号,133-143頁)

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