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このコーナーはMagPlusや雑誌の編集を担当するメンバーによるブログ。誌面だけでは伝えきれない話題をお届けします。

2012.08.24

実録 判決文ってどうやって手に入れるんですか?

先生,判決文がほしいんですが!

 越谷の調剤過誤事件に対する刑事裁判の判決が出たという新聞記事を見て,早速,弁護士の赤羽根秀宜先生にメールをお送りしました。
 「裁判の判決文を見ながら先生にインタビューをお願いしたいのですが,判決文はどうやったら入手できるのでしょうか?」。我ながら子どもみたいなメールです。
 赤羽根先生にいろいろ教えていただいて,判決文の入手はけっこうハードルが高いことを知りました。弁護士さんだからすぐ手に入るというものではないそうです。判決文をもらうのではなくて,書き写す許可が出るだけかもしれないとのこと。

とりあえず電話してみる

 とはいえ,入手できるかどうかは試してみなければわかりません。

 まずは事件の管轄であるさいたま地方検察庁に電話をしてみました。
さいたま地方検察庁:「判決文は裁判所が出すものです」
 おっしゃるとおりですね。続いてさいたま地方裁判所に電話をしてみました。
私:「かくかくしかじかですが,判決文はいただけないでしょうか」
さいたま地裁(以下,さ):「その裁判はいつ判決が出たのですか?」
私:「3日前です」
さ:「それではまだ文書になっていないかもしれません。文書になった時点で,判決をお渡しできるか検討しますので,お時間をください」
私:「わかりました。いつ頃結論がでるのでしょうか」
さ:「それはわかりません」
私:「では,ちょくちょく電話をさせていただいてもよろしいでしょうか」
さ:「いやぁ……,ではこちらからご連絡します」
 私の「ちょくちょく電話」作戦を警戒したのか,地裁からご連絡をいただけることになりました。

「交付願いを送ってください」

 最初の電話から数日後,会社にさいたま地裁から電話がありました。裁判所からの電話と聞いた周囲の好奇の目にさらされながら電話をとります。
さ:「先日の件ですが,交付の手続きを行いますので交付願いを送っていただけますか」
私:「いいんですか! ありがとうございます。で,交付願いってどんなもんでしょうか(どこかで買ってくるのか? 高いんじゃないか? 司法書士に書いてもらうのか? とおびえつつ)」
さ:「とくに決まった書式はありませんので,判決日や裁判長名,被告の名などどの裁判かわかるように記載して,請求の理由・用途も書いてください」
 裁判長の名前などは新聞に書いてありますから大丈夫です。用途も「弁護士さんにインタビューするための資料だ」と強調して,郵便で送りました。

「お送りします」「行きます!」

 それからしばらく経って,再びさいたま地裁から電話がありました。
さ:「判決の写しができましたので,郵送しますから封筒を送ってください」
私:「いただきに上がります! 何時まで開いてますか?」
 郵送の時間のロスを考えると,浦和まで行ったほうが手間がかかりません。裁判所なんてめったに行けるところでもない,という野次馬根性があったことは否定しませんが。
 その日は他の用件もなかったので,さっそくJR京浜東北線に乗って浦和まで行き,そこからバスで裁判所まで。

●真ん中奥がさいたま地方裁判所の入った建物


 裁判所に近づくと別に何もしていないのに動作がぎくしゃくする小心者の私ですが,守衛さんに呼び止められることもなく無事に建物内へ。
 ここはさいたま地裁とさいたま家庭裁判所がいっしょに入っていて,事務局もそれぞれあるので間違えないように,と事前に詳しくレクチャーしていただいたので,とくに迷うこともなく地裁の事務局へ。裁判所とはいえ,普通のオフィスに普通の公務員の方々が働いています(あたりまえだ)。
 ここで,いろいろと手続きの労をとっていただいた方とご挨拶し,書類をいただきます。
さ:「それでは,担当の裁判官がご覧になりますので,記事ができたらお送りいただけますか」
私:「ウェブサイトなので,サイトを印刷したものをお送りするのでいいですか?」
 などとやりとりをした後で,皆さんにお礼をいいながら事務局を後にしました。

考えさせられる事件でした

 そんなこんなで入手した判決文の写しを元に行った,赤羽根先生へのインタビューのもようはこちらのとおりです。

 記事を掲載する直前に,埼玉県の薬務課から事件のあった薬局に対し,毒薬の管理体制など薬事法違反があったとして業務停止30日間の行政処分が下されました。
 これで刑事上も行政上も一区切りがついたことになりますが,この事件を振り返ると,被告となった管理薬剤師の個人的な資質に問題を帰着させるだけではいけないように感じました。判決文や起訴状だけですべてを把握することはできず,なお「なぜ」がたくさん残る事件ですが,裁判を通じて明らかにされた事実を通して,薬局の安全管理体制のあり方を今一度見直すことも大事ではないでしょうか。

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