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このコーナーはMagPlusや雑誌の編集を担当するメンバーによるブログ。誌面だけでは伝えきれない話題をお届けします。

2012.01.21

BtoBとBtoC

 『調剤と情報』2012年1月号特集はIT活用がテーマ。医療情報の連携に向けて,国レベルから地域レベルまで,さまざまな試行が進んでいることがわかります。
 とくに,処方・調剤情報については,政府のIT戦略本部が2010年5月に発表した「新たな情報通信技術戦略」に沿って作られた工程表のなかで電子版お薬手帳を2013年から開始することが示され,薬局・薬剤師にもIT化がぐっと身近になってきました。
 このあたりの経緯は,今回の特集や『調剤と情報』2011年6月号の「どこでもMY病院構想を読み解く」をご覧いただくとわかりやすいと思います。

2つの構想

 ところで,工程表には電子版お薬手帳が盛り込まれた「どこでもMY病院構想」と,「シームレスな地域医療連携構想」が示されています。同じ医療情報の連携がテーマなのに,わざわざ2つに分けてあるのが今ひとつわかりづらいな,と私は感じていました。

BtoBとBtoC

 先日,ある方と話をしていてその2つの違いをわかりやすく表現していただいたのがこの言葉です。蛇足ですがBtoBとは企業間(BusinessとBusiness)の取引を意味するビジネス用語で,BtoCは企業と消費者(Consumer)との取引を意味します。どうやら電子商取引の世界から生まれた言葉のようです。

「シームレス」はBtoB

 「シームレスな地域医療連携」は,地域の医療機関どうしが患者の情報をやりとりできる仕組みを作って,患者がどの医療機関・薬局にいっても,医療機関間で情報のカベができないようにする構想,と大雑把にいうことができます。ここで情報をやりとりするのは医療機関間で,やりとりに患者が介在しないことから,BtoB取引のようなものということができます。あくまでたとえですが。

「どこでも」はBtoC

 一方の「どこでもMY病院構想」は,診療や検査,調剤の記録を患者が医療機関・薬局から受け取って自ら管理することを想定しています。患者を消費者とみなせば,BtoC取引のようなものだといえます。

同じ情報といっても目的が違う

このように目的が異なることから,たとえば調剤に関する情報でも「シームレス」と「どこでも」の内容は異なってくるようです。電子版お薬手帳は「どこでも」のなかで検討されていますから,情報は患者に渡して患者が自己管理することが前提となっています。そのために,どの情報をどのように加工して,どんな手段で患者に渡すかが,標準化を検討する際の課題となっているようです。
 一方の「シームレス」は,医療機関間のシステムの違いによる,データの非互換性を克服するための標準化,という視点で検討が進められる見込みです。

情報を独占する時代ではなくなった?

 いずれにせよ,医療情報を広く医療機関,薬局,患者などが共有することによって,医療の質の向上や無駄の排除に結びつけるのが狙いであることは変わりません。
 薬局の薬歴も医療情報の一つとして,とくに客観情報については他医療機関・薬局と共有する時代がすぐそこに来ているのではないでしょうか(ただし,電子版お薬手帳には盛り込まれないようです)。主観情報(所見など)については医師の抵抗も強いようですが,ニーズが高ければ変わってくるでしょう。
 昔の『調剤と情報』で「薬歴は誰のものか」というテーマで誌上ディベートしたことがありますが,なぜそんなテーマを考えたのかというと,当時は「薬歴は薬局の財産だ」という考えが強かったからでした。しかし,もう情報を独占する考え方は通用しなくなってきたのかもしれません。
 さらに飛躍して考えれば,「あなたの情報を私が持っているから,私の薬局に来たら安心です」から,「あなたの情報を見せてくれれば,私はあなたのことをよくわかったうえで調剤します」というアピールの仕方が重要になるかもしれません。つまり情報を持っていることが薬剤師の価値になるのでなく,情報をより活用する能力が薬剤師の価値になるのではないかと,そんなふうに思います。(MK)

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