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このコーナーはMagPlusや雑誌の編集を担当するメンバーによるブログ。誌面だけでは伝えきれない話題をお届けします。

2012.02.29

お薬手帳の役割が変わる,拡がる

「患者の求めに応じて」ではなくなる

 4月の調剤報酬改定で,「薬剤情報提供料」は「薬剤服用歴管理指導料」と一つになり,お薬手帳の交付が薬歴管理指導料算定要件の一つとなりました。
 その際,「薬剤情報提供料」の算定要件の一つであった,「患者の求めに応じて」という表現がなくなりました。なくなったというよりも,元々薬歴管理指導料は患者の意向とは関係なく算定できますので,お薬手帳の交付も同様に扱われるということです。つまり,今後は患者の意向と関係なく,薬局が患者の薬歴管理を行う一環として,お薬手帳を交付することになります。

キーワードは「情報の共有」

 なぜそうなったのか,中央社会保険医療協議会の議論を振り返ってみましょう。
 2011年11月30日の中医協総会の議論では,お薬手帳の交付(薬剤情報提供料)を薬歴管理指導料に含めるキーワードとして「情報の共有」が挙げられています。
 当日,説明した厚生労働省保険局医療課の吉田易範薬剤管理官は次のように説明しています。少し長くなりますが議事録から引用します。

 一方で、スライド22からでございますが、いわゆるお薬手帳に薬剤情報提供料というものがございます。これは、患者さんの手帳に経時的に記載された薬歴を通じて、薬剤使用の適正を図るというものでございますが、これにつきまして、スライドの23でございますが、先般の東日本大震災の場合におきまして、このお薬手帳を通じたお薬に関する情報の共有というのがスムーズにいったということで、その有用性が再確認されたと認識しているところでございます。
 ただ、このお薬手帳の普及でございますが、スライド24でございますが、高齢者の方は6割を超えてございますが、全体として見た場合には、半分以下、全体で55%の普及率になっているということでございます。
 スライド25でございますが、かつては後期高齢者の薬剤服用歴管理指導料という評価体系の中では、いわゆる薬歴の部分とこの薬剤情報提供料、これが一体となった評価体系であったというような事実がございます。
 したがいまして、御提案としましては、スライド26でございますが、そのお薬手帳を通じた薬剤情報共有が有用であろうと考える中、薬歴と一体的な情報提供、薬剤管理指導を行えるような薬剤服用歴管理指導料と情報提供料を合わせたような診療報酬上の評価体系にしたらどうかということでございます。


 ここで吉田管理官がお薬手帳のメリットとして挙げている「情報の共有」というのは,震災時の医療従事者と患者の間,あるいは医療従事者間の情報共有手段として有効だったという意味になります。

医療従事者の情報共有手段だから「患者の求め」と無関係に

 これまでお薬手帳は患者への情報提供という意味あいで交付されており,そのため「患者の求めに応じて」という表現で患者の意向を確認することが求められていました。
 新たな調剤報酬の下では,お薬手帳が薬剤師と患者の間だけでなく,医師と患者の間や医療従事者間の情報共有の手段として用いられることになるため,「患者の求め」の有無に関わらず交付されることになるのです。

後期高齢者薬剤服用歴管理指導料

 その雛形はすでにありました。先の引用部分で吉田管理官も例示している「後期高齢者薬剤服用歴管理指導料」(2008年~2010年)では,薬歴管理指導料算定の要件にお薬手帳の記載も含まれていました。今回の薬剤情報提供料と薬歴管理指導料の合体は,これを復活させ保険調剤全体に広げたものといえます。

少し残念な気も

 ここからは私見になりますが,医薬分業のこれまでの進め方で感心していたのは,ある程度患者の意思が尊重されていたことです。そもそも,処方せんを院内で調剤してもらうか,院外で調剤してもらうかについても,本来は患者の意思が尊重されるはずでした。また,今回の改定でどちらもなくなりますが,調剤報酬の算定要件に「患者の求めに応じて」(薬剤情報提供料),「患者の同意を得て」(後発医薬品情報提供料)という表現があることに,患者の立場として好印象をもっていましたので,それがなくなるのは少し残念な気もします。
 今回,お薬手帳は患者の意向と関係なしに交付されることにありますが,患者が情報共有の媒介役となるわけですから,何のためにお薬手帳が必要なのか患者の理解を求めることは重要です。今までのように,シールを渡して「貼っておいてくださいね」というだけでは,患者が手帳に貼らなかった場合,医療従事者間の情報共有という目的を達していないと判断される可能性もあるでしょう。(MK)

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