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このコーナーはMagPlusや雑誌の編集を担当するメンバーによるブログ。誌面だけでは伝えきれない話題をお届けします。

2013.07.30

薬剤師業務のトレンドを探る 学会取材総まとめ&雑感(後編)

医療薬学フォーラム2013

 医療薬学フォーラム2013は7月20,21日の2日間,金沢市の石川県立音楽堂で開催されました。多数のシンポジウム,ワークショップ,ポスターセッションが行われましたが,シンポのテーマとして「連携」,「共同」が多く取り上げられ,同フォーラムのメインテーマ「薬の専門家としての薬剤師の立ち位置を考える」の一つの答えを示しているようでした。

ファーマシューティカルケアプランで医師と協働

 シンポジウム「薬剤師外来:医療連携の実際~薬剤師から始める共同薬物治療管理~」で日立総合病院薬務局の青山芳文氏は,同病院で1999年から作成している「ファーマシューティカルケアプラン」を用いて,患者の薬物治療中のモニタリングや薬物投与前のスクリーニングを行っていることを紹介。同プランが共同薬物治療管理で用いられるプロトコルの役割を果たしているとしました。同プランは院内のクリティカルパスに組み込むことを想定して作成したもので,パスに組み込むことにより薬剤師業務を病院としてオーソライズしています。


●シンポジウムのようす


医薬品供給から患者ケアへ

 特別講演「Pharmacists, Now and the Future」を行った次期米国薬剤師会会長のマシュー・オスターハウス氏は,米国薬剤師の主な業務が医薬品供給から「患者ケア」に移ってきたことを紹介。その背景として,ファーマシューティカルケアの概念の成立や,薬剤師免許取得にPharm.Dが要件となったことが大きいと指摘しました。その流れのなかで,薬剤師による予防接種業務などが保険給付されるMTM(Medication Therapy Management)が地域薬局の取り組みとして認められているとしました。今後の課題として同氏は,入院患者の退院後の管理がよくないため再入院が増えてきていることを挙げ,患者に薬物治療の重要性を知らせ,入院医療と外来医療のギャップを埋めるのが薬局薬剤師の役割だとしました。


●オスターハウス氏


米国でも「薬局専用医薬品」カテゴリー化の動き

 また,オスターハウス氏はFDA(米国医薬品食品局)から処方薬(医療用医薬品)とOTC薬(一般用医薬品)との中間カテゴリーとして「薬局専用医薬品」(Pharmacy only Medicine)の創設が提案されていることを紹介しました。これは,どこでも販売できるOTC医薬品とは異なり,薬剤師だけが医師の処方なしに販売できる医薬品という分類。詳細はこの場では説明されませんでしたが,これまで欧州や日本と異なり専門家の介在が必要な医薬品は処方薬しかなかった米国で,他国と足並みを揃えるような動きがあることは注目されます。

薬剤師の見える化が足りない

 シンポジウム「医療協働と医療薬学・薬剤師が果たすべき役割」で,患者の声を長年にわたり電話相談というかたちで聞いてきたNPO法人「支えあい医療と人権センターCOML」理事長の山口育子氏が,患者の声からみえてきた薬剤師に求められるものを紹介しました。
 山口氏は,日本の医療が外来・在宅にシフトしつつあるなかで,「患者が日常生活を送りながら治療する際に感じる不安は薬局薬剤師に相談したいはずなのに,薬剤師に何を期待できるのか,薬剤師の存在意義が理解されていない」と指摘。薬局薬剤師の「見える化」を進めてほしいと要望しました。とくに薬歴管理業務,疑義照会,情報提供の3点について,「こういうことをするのが薬剤師の役割だと患者が理解すれば,かかりつけ薬局をもったり,お薬手帳を一つにまとめる意義も理解される」と述べ,薬剤師が自らの業務を患者に理解されるよう取り組みを求めました。
 また,6年制薬学教育で5カ月の病院・薬局実習が行われるようになったことで,「学生が薬剤師の後姿を見て学ぶ時代になった」と強調。現場薬剤師の意識改革を求めました。


●シンポジウムのようす

共同と分担 新たなスキームが生まれるか

 6月下旬から7月中旬に開かれた4つの学会と1つの研究会のもようをご紹介してきましたが,そのなかでいくつかキーワードが浮かび上がってきたように思います。

キーワード1 共同

 まず目立ったのが「共同薬物治療管理」(CDTM)に代表される,共同あるいは協働という言葉。チーム医療の推進に関する医政局長通知を契機に,適正な薬物治療を医師と薬剤師が共同で行うことへの機運が高まっています。今回紹介した4学会・1研究会のうち,「共同薬物治療管理」をテーマにしたシンポジウムが組まれていたのは3学会・1研究会。薬剤師が薬物治療に主体的に参画していこうという意欲を反映したものといえるでしょう。
 また,薬剤師外来による患者モニタリングを通じて,医師への処方提案やより密接な患者指導を目指す動きも目立ちます。薬物治療のなかでの薬剤師の役割を高める象徴的な存在としての薬剤師外来,という印象を受けました。

キーワード2 分担

 医療職種の共同を考えるうえでは,各職種の役割の明確化も重要になってきます。その観点からユニークだったのが,ジェネリック医薬品学会シンポで出された「成分・分量は医師が決定,剤形は薬剤師が選択」という役割分担の考え方。お互いの得意分野を活かすという観点からの発言でしたが,保険医療での処方箋の記載ルールといった細かい問題を抜きにすれば,医薬分業の本質を考えるテーマとなるように感じました。

キーワード3 共通言語

 医療職種の共同あるいは分担のためには,お互いの意図や目標を理解する共通言語が必要になります。昭和大・木内氏が日本薬局管理学研究会で紹介した臨床判断能力は,セルフメディケーション支援だけでなく,チーム医療を進めるための医療職種間の共通言語として重要な要素になるものと思われます。
 共通言語という視点からは,医療薬学フォーラムでの質疑応答で面白いやりとりがありました。共同薬物治療管理がテーマのシンポで,フロアの医師から発表したシンポジストに対し「(発表した取り組みが患者の)どういう指標を改善するのか」と質問が上がったのです。
 薬剤師による患者指導などの介入が,最終的に患者の何を改善するのかという疑問は,チーム医療のなかで薬剤師がどのような役割を果たすのかという問いと同義でしょう。医療チーム全体が患者のアウトカムの改善という同じ目標に向かって取り組むことが求められるなかで,その「共通言語」ともいえる評価指標の共有が求められるでしょう。

キーワード4 患者の理解

 チーム医療を進めるなかでカギになるのが,患者がチームによる医療の遂行を認証することです。そのためには各職種の役割・目的が患者に十分理解される必要があります。その点で,医療薬学フォーラムで山口氏が指摘した,薬局薬剤師の役割が見えていないという指摘は,これから在宅・外来医療が重視されるなかで喫緊の課題となりそうです。
 また,在宅薬学会で三輪氏が指摘した,薬剤師がバイタルサインを取得する際の患者の同意取得や目的の明確化は,これまで医師や看護師の仕事と患者から思われてきた行為を薬剤師が行うためには,不可欠なものとなるのではないでしょうか。
(MK)

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