ユーザー登録
ID・パスワードを忘れた方はこちら
ご利用について

MagPlus+


MagPlus+イメージ

MagPlus+

このコーナーはMagPlusや雑誌の編集を担当するメンバーによるブログ。誌面だけでは伝えきれない話題をお届けします。

2012.10.13

【Report】医療の情報化・産業化の先駆者,故開原成允氏を偲ぶシンポが開催

 9月29日に,国際医療福祉大学大学院主催による,前大学院長の故開原成允氏の業績を偲ぶ記念シンポジウムが都内で開催されました。
 開原成允氏は東京大学医学部教授時代に,院内の電子システム化や国立大学病院間のネットワーク「UMIN」を推し進めるなど,日本の医療の情報化の先駆者として知られていました。
 また,医療の質の向上のためには技術進歩を評価する仕組みが必要との観点から,保険医療外の経済的評価や医療技術の海外進出なども提唱するなど,既存の医療サービスの枠にとらわれない発想で時代をリードする存在でもあったことなどが紹介されました。

医療情報は患者サービスのため,医療の質の向上のため

 東京大学大学院医学系研究科教授の大江和彦氏は,UMINをはじめとする医療情報ネットワークに対する開原氏の先見性など,東大時代の開原氏の業績や思い出を紹介しました。


●大江和彦氏

 大江氏は,医療機関へのコンピュータの導入が珍しかった1973年頃に,開原氏が院内向けに記した記事を紹介。コンピュータ導入の目的の第一は患者サービスの向上、第二は医療の質の高度化、と指摘していたことをあげ,単なる効率化の視点ではなかったことを紹介しました。
 当時,コンピュータ導入に対し人員整理につながるとの理由から,病院職員の抵抗が強かったものの,開原氏は反対する職員とも粘り強く交渉を重ね,理解を得ていったエピソードも紹介しました。
 また,大江氏は,病院に導入したコンピュータがレセプト処理に主眼を置かれていたことを,開原氏が不満に思い「毎日の料金の計算だけではもったいない」と語っていたことを紹介。そこから大学病院間のネットワーク作りを計画し,後のUMINにつながっていったことを紹介しました。
 また,レセプトや特定健診の情報を医療の質の向上のためにフィードバックすべきと開原氏が考えていたことや,その実現のために厚生労働省の「レセプト情報の提供に関する有識者会議」の座長を務め,報告書を取りまとめる直前に亡くなった開原氏を偲びました。

医療技術の進歩には医療保険のワクを出る発想が必要

 内閣官房参事官の藤本康二氏は,今年7月に閣議決定された「日本再生戦略」に盛り込まれている医療・介護健康関連産業の「ライフ成長戦略」に,開原氏が提唱していた「医療の産業化」のポリシーが反映されていることを紹介しながら,藤本氏が異動前に経済産業省で開原氏とともに議論してきた医療の産業化について紹介しました。

●藤本康二氏

 藤本氏は「医療の産業化」の意味について,開原氏の考える産業とは「需要があれば応えること」で,それに対価を払ってもらうことだと説明しました。
 また,開原氏は,保険医療が医療のなかで大きな比重を占めていることが,「一部の人だけほしいと思った医療が手に入らない」という弊害も生んでいるとの認識を示し,「診療報酬だけで病院の建て替えはできるのか」という例えで,医療の高度化への対応に難が生じることを懸念していたとしました。
 藤本氏は,「新しい技術がパイ(保険医療財源)の取り合いになってきた。そうならないように、保険に乗らないもの(公的保険外のサービスの提供:医療周辺サービスの振興)や海外への進出によって,日本の医療技術を成長させていく必要がある」と認識し,日本の医療サービスの輸出(アウトバウンド)と,国内での外国人患者の受け入れ(インバウンド)を進めていく考えを示しました。
 すでに経済産業省では,日本の医療機関による海外への技術供与などの実態を調査し,今後はそういった日本式の医療サービスを提供する海外の医療機関が,日本の医療機器などを採用するかたちで輸出につなげていく考えを示しました。(MK)

会社案内
利用規約
お問い合わせ