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このコーナーはMagPlusや雑誌の編集を担当するメンバーによるブログ。誌面だけでは伝えきれない話題をお届けします。

2013.03.28

チーム医療・連携の考え方や実例を紹介 全国都市立病院薬局長協議会研修会


 全国の自治体立病院の薬剤部長・薬局長で組織する「全国都市立病院薬局長協議会」(会長・今泉幸久都立駒込病院薬剤科長)の研修会が2月8日,神戸で開催され,これからの薬剤師業務のキーワードとなるチーム医療,地域連携の話題を中心に,考え方や事例紹介が行われました。また,予算や人員配置の制約が厳しい自治体立病院にとって切実な問題である,「病棟業務実施加算」の算定や,一部の病院で導入が進む「薬剤師レジデント」の活用事例も紹介されました。

病棟業務加算を4月から算定,次の取り組みは薬剤師外来

 「新しい薬剤師の役割」と題し講演した,神戸大学医学部附属病院薬剤部長の平井みどり氏は,今年4月に薬剤師12人を増員し,病棟薬剤業務加算の算定を開始する予定であることを紹介しました。平井氏は「新しい薬を紙(の情報)で学ぶのではなく実体験することが大事。その体験を考察できるのが臨床の面白さ」だと述べ,病棟で薬剤師が活動する意義を説明しました。
 また,病院内でチーム医療を進めるうえで,患者に最も近いところにいる看護師の視点を重視し,看護師と薬剤師が相互理解に基づく「お互いさま」の関係となるよう求めました。
 病棟業務実施加算については,次回診療報酬改定で実績の再評価が行われる方針であることから,薬剤師による病棟業務の質をどう評価するかが今後の課題になるとの見方も示しました。
 さらに平井氏は,米国のCDTM(共同薬物治療管理)では,医師ではなく薬剤師などが外来診察を行うことが進んでいることから,「私たちも病棟業務実施加算への対応が済んだら外来に出たいと考えている」と述べました。

外来がん化学療法で地域連携の仕組みを検討

 平井氏が薬剤師外来で取り組むべき課題の一つに挙げているのが,外来がん化学療法を効果的に進めるための地域薬局との連携。同大学病院では,がん化学療法を受けるティーエスワン投与患者を対象に,神戸市薬剤師会会員薬局との関係づくりを進めていることを紹介しました。

●平井みどり氏

薬剤師外来で入院前から薬剤指導管理

 神戸市立医療センター中央市民病院副薬剤部長の北田徳昭氏は,同病院で開始した,薬剤師の外来業務について紹介しました。同病院では薬剤師が外来の診療室の一つを利用して,外来がん化学療法を行う患者や分子標的薬で治療を受ける患者について,副作用チェックや効果のモニタリングなどを行っています。
 分子標的抗がん薬ソラフェニブによる治療では,手足症候群の副作用による治療の中断などが問題となりますが,同院では患者の受診時に薬剤師が副作用チェックを行い,投与量調節や支持療法の処方提案を行うことで副作用の重篤化を防ぎ,これまで40人の治療で手足症候群の中断例は1例のみといいます。
 また,「入院前検査センター」では,入院予定患者が入院治療に影響のある薬剤を服用していないか入院前にチェックし,常用している薬剤が影響を及ぼす可能性がある患者,あるいは服薬状況に問題がある患者などには,「内服薬確認外来」で患者から情報収集し,常用薬の整理や処方提案などを行っており,北田氏はこれらの取り組みについて「入院前からの薬剤指導管理」と表現しました。

●北田徳昭氏

6年制が薬剤師と医師の関係を変える

 ファルメディコ株式会社の狭間研至氏は,チーム医療のあり方について,「6年制薬学が医師と薬剤師の関係を根本から変える」と指摘。薬剤師はこれまで「薬が効いた喜びも,悪くなったときの対応もできるポジションでなかった」とし,従来の機械的作業からイノベーションするためにも,医師との共同薬物治療管理により,医師と薬剤師の関係を変えていくよう求めました。
 その際に,薬剤師が独立して薬物治療を行うのではなく,「医師との協働でないと足元をすくわれる。医師へのフィードバックが必要だ」と留意を求めました。
 また,狭間氏は医師と薬剤師との役割分担を考えるうえで,「医師の役目は診断と治療だが,そのなかには薬剤の選択も入る」と指摘。ただし,「たとえばH2ブロッカーを使う,というところは(医師は)譲りたくない。しかしH2ブロッカーのうちのこれにしましょう,というのは薬剤師」と述べ,患者個別に薬物治療を最適化する取り組みを求めました。

調剤した薬を患者がのむ間の責任を

 疑義照会に関しても「医師は一般論では動かない。薬剤師が患者の未来を予測して,それを確かめにいく」ことが重要と指摘。「14日分調剤してハンコを押したなら,責任は14日間。その間に患者に何が起こっているか,自分で確認してほしい」と求めました。

●狭間研至氏

薬剤師外来の現場も視察

 同協議会は研修会翌日の9日に神戸市立医療センター中央市民病院を訪れ,同病院の薬剤師外来や手術室のサテライトファーマシーなどを見学しました。
 同病院薬剤部長の橋田亨氏は見学に先立ち,同院の薬剤師の活動状況をレクチャーしました。

●病院の研修室で事前レクチャーを行う橋田亨氏


 薬剤部では同病院が現在地に移転した2009年度からの事業計画で,薬剤管理指導業務の充実のために全病棟への薬剤師の常駐を準備してきました。現在では全病棟とICU,救急部への薬剤師の常駐を進め,さらに病棟薬剤師などによる薬剤師外来の実施に至っています。
 さらに同病院では,早くから薬剤師レジデントを採用し,今年度は10人のレジデント薬剤師が業務の傍ら臨床をベースにした研究活動の基礎を学んでいます。

 以下,病院見学のようすは写真を中心にご紹介していきます。


●調剤室から入院病棟へはカートの自動運搬システムが稼働。調剤後の搬送などは物流会社のSPDが受け持つ


●外来化学療法室では,薬剤師が無菌調剤と患者への説明・指導を行う


●「入院前検査センター」で,入院治療に影響のある常用薬の服用がないかなどを事前に確認する


●外来診察室の一つを利用した「内服薬確認外来」。完全予約制で,患者に対応するのは各種の専門薬剤師


●手術室にあるサテライトファーマシー


●同病院薬剤部DI室は院内医薬品集のiOS用アプリケーションを一般公開している
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