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このコーナーはMagPlusや雑誌の編集を担当するメンバーによるブログ。誌面だけでは伝えきれない話題をお届けします。

2013.09.05

桑島巌氏がエビデンスの功罪を解説

 日経印刷主催の特別セミナーが8月28日に開かれ,臨床研究適正評価教育機構(J-CLEAR)理事長の桑島巌氏(東京都健康長寿医療センター顧問)が,「今,ドクターが求める医療情報とは?」をテーマに講演を行いました。
 J-CLEARは臨床研究の健全な発展を目的に各種臨床試験の評価などを行い,医師らを対象に啓発・情報提供などを行うNPO。厚生労働省「高血圧症治療薬の臨床研究事案に関する検討委員会」委員でもある桑島氏は講演で,医療関係者間で大きな話題となっているARBディオバン(バルサルタン)の論文ねつ造事件の背景と問題点について解説。医療現場の情報に対する評価能力やマスコミの姿勢に対し,歯に衣を着せぬ口調で苦言を呈しました。

“エビデンス”は医師がひれ伏す印籠

 桑島氏はEBMの功罪として,客観的根拠に基づく標準治療が可能になるなどの“功”がある一方,エビデンスが得られている治療は批判的吟味なしに受け入れられてしまうなどの“罪”があると語りました。
 特に,ほとんどの臨床試験が企業の経済的支援のもとで行われ,企業に有利な評価や解釈,情報提供がみられる現状を問題視。エビデンスを水戸黄門の印籠になぞらえ,「これさえあれば医者がひれ伏す。そこに製薬企業が飛びついている」と指摘しました。

企業に有利なエンドポイントを後づけ

 そのうえで,企業が関わる臨床試験で期待される良い結果が出なかった場合,①結果を発表しない,②経済的支援を打ち切り,試験を中止させる,③主要エンドポイントではなく,二次エンドポイントで良いところを探し,それを強調する,④後ろ向き解析でさまざまな補正を行う――などの対応がとられると説明。
 例としてディオバンの大規模臨床試験「VALUE」を挙げ,心疾患の発症期間(ハザード比)で好ましい結果が出なかったため,発症件数(オッズ比)がエンドポイントとして後づけされたことを指摘しました。

疑問を呈しても賛同者は少なかった

 さらに同試験では,医師と患者双方が処方薬を認識できるPROBE法による試験でありながら,「狭心症による入院」など診断(介入)を伴う項目がエンドポイントに設定されているなどの問題点を提示。
 「KYOTO HEART Study」,「JIKEI Heart Study」も含め,ディオバンの大規模臨床試験結果には「公表当時から疑問をもっていたが,賛同者は少なかった」と述べ,医療関係者や学会,マスメディアに対し,情報を正しく評価・発信する姿勢を求めました。
(NA)

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