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このコーナーはMagPlusや雑誌の編集を担当するメンバーによるブログ。誌面だけでは伝えきれない話題をお届けします。

2012.07.11

【Report】総務省医療ICTシンポジウム

 6月21日に総務省の「医療ICTシンポジジウム―医療ICTが創る地域の未来―」が都内で開催されました。政府IT戦略本部が打ち出した「どこでもMY病院構想」,「シームレスな医療連携」に基づき総務省が各地で行っている実証事業の内容などを中心に事例報告が行われました。
 ここでは薬剤師にも関心の高い「電子お薬手帳」の事業など薬剤関連の話題を中心に,シンポの内容をご紹介します。

薬局薬剤師がメリットを感じる医療情報の連携

 香川県高松市・さぬき市で行われている「処方情報の電子化・医薬連携実証事業」を紹介した株式会社STNetの横田貴文氏は,既刊病院の電子カルテ情報を地域医療機関・薬局と共有する仕組みづくりによるメリットを報告しました。
 香川県のシステムでは,医療機関からのカルテ情報,処方情報を地域薬局で閲覧できるだけなく,薬局からの疑義照会内容や,薬局での調剤内容も閲覧できる仕組みとなっています。これにより,処方医が前回の調剤内容や残薬の状況などを参照して処方オーダーを変更するなどの連携が可能となっています。
 薬局薬剤師は検査値情報や診断名などを参照して患者指導ができるメリットがあるといいます。
 今後は服用しているOTC薬の情報の管理や,病院への持参薬の管理も行えるよう,システムを拡張していく構想も示しました。

●横田貴文氏

医療費控除申請のしやすい仕組みで普及を図る「ポケットカルテ」

 京都府を中心に地域医療機関,薬局で患者の医療情報を管理・利用する「地域共通診察券」(ポケットカルテ)を展開している,特定非営利活動法人「日本サスティナブル・コミュニティ・センター」の北岡有喜氏(京都医療センター医療情報部長)は2008年にスタートした同事業の現状と将来の展開を紹介しました。
 同事業は,受診データを基幹病院のサーバーで管理し,各医療機関,薬局が患者の同意を得て情報を閲覧・記入する仕組みとなっています。この仕組みの特色は,受診したデータを元に患者が自宅のPCなどを使って医療費控除の申請にも利用できる「ヘルスケア家計簿」という仕組みを一緒に持っていること。その理由について北岡氏は,システムの普及に向けた医療機関側のインセンティブとして,「ヘルスケア家計簿」を導入したことを説明。患者が医療費控除の手間を減らせるメリットを感じることで,「ポケットカルテ」対応の医療機関への受診を望むようになるという狙いがあったことを紹介しました。
 現在は30医療機関,約2万5,000人が登録するまでに拡大しており,医療費の明細書から「電子お薬手帳」を自動作成する仕組みも導入しています。

●北岡有喜氏

処方情報のレセコン取り込みで入力ミス軽減

 島根県出雲市・太田市を中心に医療情報の共有を進めている「しまね健康情報活用推進コンソーシアム」の「共通診察券」事業の内容を報告した児玉和夫氏(出雲市医師会)は,薬局の同システムの利用が病院より多いことを紹介し,医療情報連携が薬局にとってメリットが大きいことを指摘しました。
 同システムは処方情報も調剤情報もデータサーバーに保管され,相互に参照できるようになっています。また,処方情報を直接薬局のレセコンに取り込むことができるという特色もあります。利用薬局の8割はこれにより入力ミスが減ると指摘していることが報告されました。

●児玉和夫氏

電子お薬手帳事業は2013年度開始へ

 今回の報告は各地で取り組まれている実証事業の内容が紹介されました。「どこでもMY病院構」想の一つである「電子お薬手帳」は来年度からのサービス開始を予定しています。電子お薬手帳に記載されるデータの標準化作業が済めば,これら事業で開発されたシステムに導入されることになるでしょう。全国一斉スタートにはならないでしょうが,実証事業が進む先進地区での電子お薬手帳の運用開始は着々と進んでいます。(MK)

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