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このコーナーはMagPlusや雑誌の編集を担当するメンバーによるブログ。誌面だけでは伝えきれない話題をお届けします。

2014.05.30

EHRの全国拡大の課題,クラウドを活用したPHRの取り組みなど紹介
MeWCAシンポジウム2014

 特定非営利活動法人医療福祉クラウド協会(MeWCA)のシンポジウムが5月15日,都内で開催されました。地域で電子化された医療・介護情報(electric health record:EHR)のネットワークをどのように構築,連携させていくかについて行政担当者や研究者が意見を述べたほか,在宅医療・介護での他職種情報連携に向けた共有方法について,患者(要介護者)自身が情報を持ち,医療・介護職種がその情報を閲覧したり記入するPHR(personal health record)をベースに議論するセッションも設けられました。

行政から見たEHRの課題と今後の目標は

 行政のICT担当者によるセッションでは,地域医療情報ネットワークづくりの実証実験などから浮かび上がった課題が紹介されました。
 内閣官房情報通信技術(IT)総合戦略室の永山純弘企画官は,昨年6月に公表した「世界最先端IT国家創造宣言」を紹介し,「これまでの実証事業を現場に実装するタイミングにきている」と指摘。医療分野では,従来の工程表を医師の視点も盛り込んで見直しながら具体化を進めていることを紹介しました。
 総務省情報流通行政局の渡辺克也官房審議官は,同省が掲げる「スマートプラチナ社会」(ICTを活用した超高齢社会)を紹介するなかで,医療や介護に関するさまざまな情報を組み合わせるプラットフォームづくりの必要性を指摘。「社会保障・税番号制度」(マイナンバー)を利用したデータ連携の仕組みをどう作るかを課題に挙げました。
 厚生労働省情報政策担当参事官室の鯨井佳則参事官は,医療機関などを結んだ地域医療情報(EHR)ネットワークの過去の実証実験などを元に講演。現状は「病院から開業医への一方通行」になっていることから,かかりつけ医(主治医)に情報を集約する仕組みづくりを課題に挙げました。また,ICT以前に「人的なつながりがベース」だと述べ,情報の共有をする以前に他職種間の交流が欠かせないことも指摘しました。
 さらに,ネットワークの維持のポイントとして鯨井氏は安価に運用できる仕組みづくりの重要性を指摘し,レセプト情報の共有をベースとした岩手県宮古市の安価な多職種ネットワークを紹介しました。


○鯨井佳則氏

クラウドを利用した患者情報の共有システムを紹介

 パネルディスカッションでは,クラウドを利用した情報共有システムのあり方として,情報を患者自身がクラウドに保管して,医療・介護従事者は患者の許可を得て閲覧したりデータを加える仕組みが2例紹介されました。
 富山県・ものがたり診療所の佐藤伸彦所長は,患者の情報を患者自身が一元管理する「ナラティブブック」のシステムを紹介。佐藤氏は「患者のデータがバラバラになるのは医療者が管理しようとしているから」ということに気づき,患者自身が自分の情報を管理して,チーム医療・介護に関わる人が患者の許可を得て,閲覧あるいは情報の追加を行う仕組みが情報の集約に必要との発想から,同システムを開発したと説明しました。情報の共有でネックになるパソコンなどが使えない人については,紙に情報を記載してそれを写真に撮り,診療所のスタッフなどに送信して入力してもらう,という方法で対応しています。


○佐藤伸彦氏


お薬手帳を活用した情報共有を提案

 北海道大学大学院客員研究員の岡﨑光洋氏は,お薬手帳を情報連携ツールとして活用することを提案しました。患者が在宅で抱える薬の服用の問題を,在宅医療・介護に関わる従事者がお薬手帳を通じて共有することにより,問題解決につなげることが可能になると指摘。そのためには患者が常にお薬手帳を持っていることが重要と述べ,紙の手帳や電子お薬手帳などの方法で患者が常に情報を携帯することの大切さを強調しました。
 岡﨑氏が開発した電子お薬手帳は,調剤した薬だけでなく市販薬などの情報も一元管理できるもので,情報はクラウドに保管することも可能となっています。


○岡﨑光洋氏


(MK)

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