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このコーナーはMagPlusや雑誌の編集を担当するメンバーによるブログ。誌面だけでは伝えきれない話題をお届けします。

2012.09.27

【Report】PBMはジェネリック医薬品普及の切り札!? 東京で日米共同シンポ


 米国の医療保険サービスの特徴的な存在としてPBM(pharmacy benefit management)という組織があります。医療保険でカバーされる薬剤給付について,保険者の一部門あるいは保険者の委託を受けた外部組織として,保険給付可能な薬剤の選択とフォーミュラリ(保険償還可能医薬品リスト)の作成,メーカー等との納入価格の交渉,調剤する薬剤師への情報提供(処方された医薬品の重複の有無などをオンラインでチェックするなど),薬局への薬剤費の支払など幅広い業務を行う組織です。
 PBMが保険医療での薬剤の使用に与える影響は大きく,米国でジェネリック医薬品(GE)の使用が急速に進んだ背景には,PBMがフォーミュラリでブランド医薬品からGEに積極に切り替えていったことが挙げられています。
 9月9日に東京・南青山の国際医療福祉大学大学院で開催されたファイザーヘルスリサーチ財団国際共同研究「薬剤給付管理とジェネリック医薬品に関する日米比較」日米共同シンポジウムでは,米国のPBMの実際が紹介されました。

医療費コントロールが米国の課題となるなかPBMが台頭

 米国でコンサルティング会社を営むグレッグ・マイヤー氏は,米国民の生活費の支出の最大の項目が医療費となるなかで,医療費のコントロールが保険者にも国民にも大きな課題となっていることを背景に,薬剤費のコントロールを行うPBMが急速に普及してきたことを紹介しました。また,米国での薬剤の保険給付は半分以上がHMO(health maintenance organization:マネージドケアを行う民間保険)とPBMが行っているなど,薬剤の保険給付でPBMが大きな影響力を持っていることを紹介しました。

1%の薬剤費節減でも大きなこと

 米国有数のHMO「カイザーパーマネンテ」でPBM部門の全米統括者として働き,現在は外部のPBM「MedImpact」社で複数の保険者にPBMサービスを提供しているクリフォード・ウォン氏(Pharm.D)は,PBMが提供するサービスの概要や,成果の一つとしてジェネリック医薬品普及に与えたインパクトなどを紹介しました。
 カイザーパーマネンテは1999年にはGEの使用率が80%になるなど,PBMを通じてGEの採用を進めており,スタチン類では2万5,000人の処方を1カ月でGEに変更するなどの実績をもっています。
 ウォン氏は「米国ではGEの処方が1%増えると薬剤費を1~2%下げるといわれている。日本でも1%の処方増で1%程度薬剤費が減らせるだろう。世界第2位の医薬品市場である日本で,1%でも薬剤費を節減できれば大きなことだ」と語りました。

●クリフォード・ウォン氏

新たなテーマ「スペシャリティファーマシー」

 PBM組織の団体であるPBMI(Pharmacy Benefit Management Institute)が毎年開催するカンファレンスに今年2月参加した,株式会社ファーマベネフィットの三津原庸介氏は,現在のPBMの関心事が,普及率の高まったGEから「スペシャリティファーマシー」(SP)とよばれる一群の医薬品に移りつつあることを報告しました。
 SPは,保存や取り扱いのコストがかかる医薬品,使用にあたり患者指導・副作用マネジメントなど特別な注意が必要な医薬品で価格の高いものを指す用語です。これらの医薬品は価格の高さだけでなく,コンプライアンス不良による医療費全体の増大も懸念されることが,PBMの関心をよぶ要因になっていると指摘しました。一方で,チェーン薬局のなかにはこれらSPの調剤,患者管理を年中無休で行うことをアピールする薬局も登場していることを紹介し,米国の薬局が新たな成長分野としてSPをとらえている,としました。 (MK)

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