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このコーナーはMagPlusや雑誌の編集を担当するメンバーによるブログ。誌面だけでは伝えきれない話題をお届けします。

2013.06.04

次世代の薬局・薬剤師業務をテーマにセミナー

 新社会システム総合研究所のセミナー「在宅でのCDTM(共同薬物治療管理)の実践と薬局・薬剤師の次世代モデル」が5月31日,同社セミナールームで開かれ,これからの薬局・薬剤師のあり方について講師がそれぞれ持論を展開しました。

2018年に“仕掛け”がみられる

 武藤正樹氏(国際医療福祉総合研究所長,国際医療福祉大学大学院教授)は,社会の期待に応えられる薬局・薬剤師となるため,社会情勢や医療政策の変化などを注視していくよう求めました。
 武藤氏は,日本の人口構成の変化や社会保障給付費の推移などをデータで示し,高齢化が進む現状を紹介。消費税増税前になすべきことが山積していると述べ,在宅医療や居住系施設での介護などを推進する行政の計画を解説しました。
 そのうえで,診療報酬・介護報酬の同時改定と新しい医療計画・介護保険事業計画の開始が重なる2018年は「制度的に仕掛けができる」と語り,国が同年にどのような施策を講じるか十分注意してほしいと訴えました。

●武藤正樹氏


在宅普及で求められる“毛細血管物流”

 薬局の役割について武藤氏は,第5次医療法改正で薬局が医療提供施設として明記されたことを「画期的」と評し,次回の同法改正ではさらに踏み込んで規定されることも考えられると述べました。
 また,医療計画作成指針に明記されている役割のうち,とくに「調剤を中心とした医薬品や医療・衛生材料の供給拠点」は,在宅医療においてますます重要になると強調。薬局・薬剤師の次世代モデルに「在宅医療に貢献する薬局薬剤師」,「地域プライマリケアに貢献する薬剤師」の2つを挙げ,在宅医療をめぐる動きとして,東邦薬品が行う医薬品・医療材料の分割販売を紹介しました。
 武藤氏は分割販売の難しさについて,チューブ1本ずつにも添付文書が必要になるため非常に手間がかかると説明し,「これから在宅医療が普及すると,このような“毛細血管物流”をやってくれるところがないと困る」と,この取り組みの重要性を指摘しました。

薬剤師の謎解き能力に期待

 狭間研至氏(ファルメディコ株式会社代表取締役社長)は,地域医療を変えるには薬剤師が変わらないといけないと述べ,薬剤師には処方解析など従来の業務にとどまらず,薬学的知識に基づく「患者の謎解き」を行ってほしいと期待を寄せました。
 狭間氏は,日本の医療はマンパワー不足という課題を抱えながら,薬局・薬剤師という社会資源を有効利用できていないと指摘。医薬分業率が頭打ちになりつつあることや調剤業務の機械化が進むことから,薬剤師は新しい役割を身につける必要があると訴えました。
 一方,薬剤師の変化は,バイタルサイン測定や在宅訪問を行えばいいというわけではなく,医師との関係が変わらなくては実現できないと指摘。医師が処方を行い薬剤師が調剤するだけという現状から脱却し,これからは患者の症状や訴えの背景にある薬の作用・副作用などを明らかにする“謎解き能力”を身につけ,処方提案を行える関係を構築してほしいと語りました。

●狭間研至氏


バイタル測定の目的化を懸念

 また狭間氏は,「薬学6年制になったのだから薬剤師は血圧くらい測らないとおかしいですよね,という人がいるが,その考えがおかしい」と,手段であるはずのバイタルサイン測定が目的化されることを懸念しました。調剤した薬に責任をもつのが薬剤師だとしたうえで,「聴診器をもつことが目的ではない。気管支を広げる薬が出されていれば,気管支が広がっているか,音を(聴診器で)聴いて確かめる」と,バイタルサイン測定の意義を説明。薬学6年制がもたらすのは薬剤師職能の拡大ではなく新しい治療戦略の到来であると語り,薬剤師職能の劇的な変化(パラダイムシフト)を求めました。

禁煙支援でCDTMを実践

 亀井美和子氏(日本大学薬学部教授)は,自身の研究で取り組んでいる禁煙支援のCDTMを紹介しました。
 同研究は茨城県笠間地区で行われており,薬局薬剤師が複数医療機関の医師との間で合意・作成したプロトコールに従い,禁煙の薬物治療を管理・サポートするという内容。
 まず,来局者は医療機関管理と薬局管理のいずれかに振り分けられ,禁煙補助薬の処方せん持参者のほか,疾患なしでも1日40本以上の喫煙者などは医療機関管理に,OTC薬での治療希望者などは薬局管理となります。
 医療機関管理か薬局管理かを問わず,薬局では禁煙状況や副作用のモニタリングを実施。プロトコールでは,起こり得る副作用への対処から受診勧奨までの流れが決められており,とくに副作用が出やすい治療開始後3~10日は,薬局によるモニタリングが治療継続に重要な役割を果たすと亀井氏は指摘しました。(NA)

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