ユーザー登録
ID・パスワードを忘れた方はこちら
ご利用について

MagPlus+


MagPlus+イメージ

MagPlus+

このコーナーはMagPlusや雑誌の編集を担当するメンバーによるブログ。誌面だけでは伝えきれない話題をお届けします。

2013.12.20

残薬対策という視点からの,地域で医師と薬剤師が協同した薬物治療

 中央社会保険医療協議会の議論で,次期診療報酬・調剤報酬に対する論点が揃いつつあります。今週末ともいわれる医療費改定率の決定が済むと,年明けからはこれまでの論点などを踏まえて具体的な改定項目の議論に入ることになります。
 次回改定に向けた論点整理のうち,調剤報酬関係は12月4日の総会で事務局(厚生労働省)からさまざまな提案が出されています。
 ここではそのなかの一つ,長期投薬患者に対する残薬対策を取り上げたいと思います。

残薬対策の新たな提案

 12月4日の中医協総会資料「総-3 調剤報酬について」の30枚目に,「残薬に関する課題と論点」という項目があります。前回の調剤報酬改定でも薬歴管理料の算定要件などで残薬対策を講じましたが,なお課題が残っているという問題意識のもとで,新たな仕組み作りが提案されています(下図)。



 少々字が小さいので改めて紹介すると,①特定機能病院&500床以上の地域医療支援病院が長期投薬の処方箋を出した場合,②調剤する薬局は「分割調剤」をし,③2回目以降の調剤は薬剤師が「患者の主治医と連携し,調剤量を調節するといった対応」ができないか,というものです。
 キーワードがいくつか出ていますので,順に説明したいと思います。

1.分割調剤

 これは古くからある仕組みで,処方箋に記された日数分すべてを一度に調剤して患者に交付するのではなく,何度かに分けて調剤し患者に渡すというものです。長期投薬が可能になった際に,分割調剤を活用して患者の状態変化(薬の効き目や副作用の有無など)を薬剤師が確かめよう,という声が出たことがありますが,広がらなかったのは現状をご覧いただくとおりです。

2.特定機能病院と500床以上の地域医療支援病院

 これらの病院でも外来診療を受け付けていますから,外来で院外処方箋が出されたり,あるいは退院時に処方箋が出されますが,その際の処方日数が長いことが知られています。
 ちなみに,特定機能病院は2012年4月時点で84病院,500床以上の地域医療支援病院は少し古いですが2008年時点で79病院しかありません。これらの病院の外来患者と退院患者の,さらに長期処方の患者だけが対象ですから,試行的導入という表現になるのですね。
 あともう一つ,特定機能病院の外来を訪れるのは原則として紹介患者であり,地域支援病院に来る患者も基本的に地域の医師からの紹介になるか,あるいは主治医への逆紹介になるはずです。つまり,患者には主治医がいるという前提が,次のポイントに関わってきます。

3.患者の主治医

 今回の提案の最大のポイントがここではないかと思っています。中医協資料は,長期処方をする病院の医師は「処方医」と書いていますが,分割調剤の2回目以降に薬剤師が相談するのは「患者の主治医」だと書いています。処方医と相談する,と表現していないところがポイントです。

薬剤師は何をするのかを先走って想像する

 もしこの「試行」が次回調剤報酬改定で導入されたら,薬剤師は何をするのでしょうか。分割調剤はあたりまえですね。では,それ以外に何をするのか,想像を膨らましてみようと思います。
 分割調剤の2回目に薬剤師はまず残薬がないかを確認することになります。もしそこで残薬があるとすれば,「患者の主治医」と相談して調剤量を減らすという判断をすることになります。
 このときに「残薬がありますからどうしましょう」という問い合わせだけで,「患者の主治医」は意見を言えるでしょうか。長期処方の患者さんですから,その処方期間中は別の病気にでもかからなければ主治医に受診することはないでしょう。主治医が意見をいうためには,患者の薬物治療がうまくいっているのかいないのかを,薬剤師からの主観的・客観的情報で判断する必要があります。つまり,薬剤師はそれらの情報を患者から聞き取ったり,あるいは測定するなどして主治医に伝え,必要に応じて薬剤師としての臨床判断を付け加えることが求められます。
 地域で医師と薬剤師が協同して薬物治療を進める仕組みが,長期処方という比較的安定した病状の患者を対象に始められるような気がしませんか。私はこれが,医師と薬剤師による協同薬物治療の端緒になるのでは,と勝手に期待しています。
(MK)

会社案内
利用規約
お問い合わせ