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このコーナーはMagPlusや雑誌の編集を担当するメンバーによるブログ。誌面だけでは伝えきれない話題をお届けします。

2012.10.06

【Report】日本へのCDTMの仕組み導入は実績作りから 地域CDTMとICTセミナー


 eヘルスコネクトコンソーシアム(理事長・成田徹郎国際医療福祉大学大学院准教授)による「地域CDTMとICTセミナー」が9月22日,横浜で開催されました。
 米国のCDTM(collaborative drug therapy management)を参考に,日本の地域医療でCDTMの仕組みを導入していく可能性や,そのなかでICT(information communication technology)をどのように活用していくかについて,行政,医師,薬剤師など関係者がそれぞれの考えを述べました。

チーム医療推進会議での薬剤師業務の検討「団体から提案あれば」

 日本でCDTMの仕組みを導入する際に,薬剤師がどのような業務を行えるかが話題の一つとなっており,その観点から厚生労働省の施策に関心が集まっています。厚生労働省医政局総務課企画調整専門官の井上大輔は「薬剤師とチーム医療について」をテーマに講演し,行政が進めている施策を紹介しました。

●井上大輔氏


 そのなかで井上氏は,現在特定看護師の業務を中心に検討している「チーム医療推進会議」などの場で,薬剤師業務のあり方を検討することについて,「団体から提案があれば,と回答している」と述べ,日本薬剤師会など関係団体からの正式な提案待ちになっていることを示しました。
 同会議では今年6月に山本信夫委員(東京都薬剤師会会長)が,薬剤師の業務に関する検討を求めた経緯があり,その後8月の「チーム医療推進方策検討ワーキンググループ」では,関係団体から提案があれば同WGで検討を開始する意向が厚生労働省側から示されましたが,9月時点では正式な提案はされていないようです。
 井上氏は2010年のチーム医療に関する医政局通知について,「現状では(病棟や在宅で)あまり薬剤師が活用されていないという問題意識がある」ことが背景にあることを紹介しました。また,同通知に記された業務を行うよう「努める」との記述がある「病棟薬剤業務実施加算」については,「薬剤師の活用が進み,医療の質の向上,勤務医の負担軽減,医療安全の向上につながると考えている」と期待しました。

米国のCDTMは法による規定が必要だった

 国際医療福祉大学教授の池田俊也氏は,日本に米国のようなCDTMを導入する可能性について講演。米国ではCDTMの実施を州法で定めている州が多いことや,薬剤師の業務内容が多彩な反面,医師との契約が必要なことを指摘し,米国同様の取り組みが日本に導入される可能性については否定的な見解を示しました。一方,医師との契約を必要とせず,米国で保険償還の対象となっているMTM(medication therapy management)が日本で行われる可能性を示しました。

●池田俊也氏

CDTMとICTを医療崩壊の解決ツールに

 ファルメディコ株式会社の狭間研至氏は,医療体制の変化により患者が病院から在宅・施設に移るなかで,患者の薬物治療が適切に管理されていない「医療崩壊」状態を防ぐ必要性を指摘。そのために医師と薬剤師が「共同薬物治療管理」というツールを用いて,地域医療にイノベーションを起こすことを期待しました。

●狭間研至氏


 また狭間氏は,地域医療で共同薬物治療管理を実施するためには,薬剤師が患者の状態を把握することや,その情報をさまざまな施設に点在する多職種が共有する必要があることから,情報技術(ICT)の活用が重要になることを示しました。
 狭間氏は共同薬物治療管理のテストケースとして,外来がん化学療法を受ける患者について,化学療法に伴う軽微な体調変化への対処をプロトコル化し,病院医師と薬局薬剤師が「協働」する取り組みを始める意向も示しました。

法を壊すのでなく実績を積み上げる

 東京都薬剤師会会長の山本信夫氏は,日本にCDTMの考え方を導入するうえでの課題について講演。日本でCDTMを行うには,さまざまな法的な問題がある。国民の多くは薬剤師への理解がないなかで,(法律に)頭からぶつかっても限界がある。(共同薬物治療管理の)実態を先に積み上げるべきではないか」との考えを示しました。

●山本信夫氏


 また,CDTMの仕組みの特徴でもある医師と薬剤師の契約についても,「保険医療の世界では“契約”という言葉は嫌がられる」ことも紹介。特定の医師と薬剤師の関係で医療サービスが提供されることへのネガティブな印象も保険者側に根強いことを示しました。
 一方,山本氏は実態の積み上げの一例として,「出された処方箋をどう活用するか」がヒントになることを紹介。「処方箋を出して投薬してもらうためだけに受診していたのでは,保険医療はもたない」と述べ,分割調剤やリフィル処方箋などの仕組みを活用する考え方もあることを示しました。 (MK)

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