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このコーナーはMagPlusや雑誌の編集を担当するメンバーによるブログ。誌面だけでは伝えきれない話題をお届けします。

2012.07.24

【Report】在宅療養支援薬局研究会第5回シンポジウム

一般社団法人「日本在宅薬学会」への名称変更を報告

 一般社団法人在宅療養支援薬局研究会(狭間研至理事長)の第5回シンポジウムが7月15・16日,大阪市で開かれました。同研究会は在宅医療の進展に対応できる地域薬局・薬剤師のあり方を考える場として2008年に設立され,これまで,バイタルサインの取り方に関する研修会などを行ってきました。しかし,会の活動が拡がるにつれて「薬局」の名称が実態にそぐわない面も出てきたとして,名称を一般社団法人「日本在宅薬学会」に変更する方針が今シンポで示されました。
 これまでバイタルサインの研修会の受講者には修了証が授与され,習熟した薬剤師はインストラクター,ディレクターとして研修の講師を務めるなど,独自の研修・認定システムを導入してきましたが,学会移行に伴い「実効性のある認定制度にしたい」(狭間氏)との意向が示されました。

●狭間研至氏

イノベーターの薬剤師が地域医療を変える

 基調講演を行った狭間氏は,現状の院外処方箋応需がベースの「薬局2.0」が,薬局の飽和・過当競争の「Red Ocean」状態に差し掛かっており,今後は在宅を含めた超高齢化社会の地域医療に対応する「薬局3.0」に移行していく必要があると分析。しかし,薬局3.0については採算性の問題や方法論が未確立などの課題が残っており,まだ多くの薬剤師が手を出しかねていると指摘しました。
 しかし,その状況を6年制薬学卒の薬剤師と医師との関係性の変化が打破すると見通し,より対等な関係で在宅の患者ケアを進めていくようになることで,マンパワー不足の在宅医療に変化をもたらす可能性を示しました。
 在宅医療での薬剤師の役割として狭間氏は,「配達や服薬支援は手段であってゴールではない。患者が求めているのは薬物治療の個別最適化」と強調。薬歴も現在の状態の記載にとどまらず,患者の次のステップを予測することが求められ,そのためにもフィジカルアセスメントのスキルが必要だと指摘しました。
 薬局2.0から薬局3.0への移行にあたって,カギになるのは薬剤師のイノベーションであると語り,18万人の薬剤師のうち4,500人の「イノベーター」が,その動向に関心を持つより多くの「Early adoptor」を動かすことでイノベーションが起きるとし,会場に集まった「イノベーター」薬剤師の活動に期待を寄せました。

医療用麻薬の調剤で患者を待たせてはいけない

●川添哲嗣氏

認知症そのものより周辺症状に注意

 くろしお薬局の川添哲嗣氏は,「薬剤師のためのハート&知識講座~緩和ケア&認知症編」と題し,在宅医療に必要な知識と心がまえについて教育講演を行いました。
 認知症のケアで薬剤師として留意すべき点について川添氏は,認知症そのものだけでなく周辺症状(BPSD)に注目するよう求めました。BPSDは認知症そのものよりも介護者の負担を強めることや,薬剤の副作用によって起こることも多いことから,BPSDの緩和につながる患者環境の改善や,BPSDを引き起こす薬剤のチェックなどに薬剤師が取り組むよう求めました。

オピオイドの調剤は真心こめて迅速に

 緩和ケアについて川添氏は,チームで取り組むにあたって知っておきたいキーワードとして「エンジェルケア」,「デスエデュケーション」,「グリーフワーク」と「グリーフケア」,「デスカンファレンス」を挙げ,これら緩和ケアを受ける患者や残された家族や医療職への心のケアに関する理解も深めておく必要性を指摘しました。
 また川添氏は,医療用麻薬を必要とする患者の状態を十分に理解して,薬局店頭で対応するよう求めました。「ある薬局にオプソの処方箋を持っていったら,『在庫がないので明日の11時に取りに来てくれ』といわれた」と憤慨する患者家族の話を紹介し,「その薬剤師は悪気があって言ったのではないだろうが,オプソがどういうときに使われる薬か知らなかったのかもしれない。在庫がないのなら周りの薬局に電話をかけてでも探し出し,急いで届けてほしい」と述べるとともに,「オピオイドの調剤は真心こめて迅速に」との原則を示しました。

●「イノベーター」薬剤師との懇親会

●懇親会では児玉孝日本薬剤師会会長も挨拶した

お知らせ

 本シンポジウムは募集開始早々に満員となり,多くの方が参加できなかったとのこと。そこで,「じほうMagPlus」は本シンポジウムのうち,特別講演Ⅰ「薬物動態学の基礎と応用」(菅野彊 先生・どんぐり工房代表)とシンポジウムⅠ「薬剤師の採るバイタルサインの法的意義」(三輪亮寿・三輪亮寿弁護士事務所,中井清人・厚生労働省医薬食品局総務課課長補佐,山崎幹夫・千葉大学名誉教授,狭間研至・在宅療養支援薬局研究会理事長)のもようについて,後日,本サイトで詳報する予定です。ご期待ください。(MK)

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