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このコーナーはMagPlusや雑誌の編集を担当するメンバーによるブログ。誌面だけでは伝えきれない話題をお届けします。

2012.08.14

【Report】6年制薬剤師誕生キャンペーン市民シンポジウム

 薬学教育協議会など薬剤師育成に関する6団体主催による「6年制薬剤師誕生キャンペーン市民シンポジウム――命と暮らしを支える~医療と地域をつなぐこれからの薬剤師像~」が8月5日,都内で開催されました。
 薬学教育が変わり薬剤師育成に大きくシフトする一方で,国民の目にはなかなか薬剤師の姿が見えてこないという現実を踏まえ,医療のなかで薬剤師が果たす役割や薬学教育の充実を市民にアピールすることがシンポの狙いで,薬学教育や医療現場の薬剤師のほか,市民代表として医療消費者団体からもシンポジストが参加し,これからの薬剤師への期待などを語りました。

実務実習で変わる薬学教育

 シンポの最初のテーマは薬学生の実務実習。医療系5学部が共同で実務実習を行う昭和大学のようすをビデオで紹介しながらディスカッションが進められました。
 昭和大学薬学部教授の中村明弘氏は「4年制薬学教育は薬のスペシャリスト養成だった。6年制教育になり,患者・疾病を詳しく知るための教育になった」と指摘。また「患者から聞く,他の医療職に伝えるためのコミュニケーションの基本も身につけることが重要」と述べました。実務実習について,東京女子医科大学名誉教授の笠貫宏氏も「薬学生が医学生や看護学生と議論するなかで人の体のすごさを感じており,学生の動機づけになっている」と評価しました。

中村氏(左)と笠貫氏

薬剤師外来など病院薬剤師の取り組みを紹介

 続くテーマは病院薬剤師の活動。国立がん研究センター東病院薬剤部の薬剤師外来や病棟業務の取り組みがビデオで紹介されました。
 ビデオにも登場したシンポジストの同薬剤部松井礼子氏は,新しい機序の抗がん薬の登場や副作用の重篤化などから,薬剤師の専門性が問われていることを紹介。さらに患者の症状に応じた副作用対策の個別化など,薬剤師が積極的に介入する必要性を指摘しました。
 また,がん治療の外来化が進み,患者と医療者の接点が少なくないなかで治療が進められることから,医師の受診の前に薬剤師が通院患者に行う薬剤師外来を通じて,患者の状態や生活環境などを把握し,医師とカンファレンスすることで治療に役立てていることを紹介しました。
 薬剤師外来について,ささえあい医療人権センターCOML理事長の山口育子氏は,「がん治療の外来化が進み,患者として聞きたいこともある。副作用は直後に出るものもしばらく経ってから出るものもあるので,(薬剤師外来のように)聞ける場所があるのはありがたい」と評価しました。

松井氏(左)と山口氏

地域薬局の役割に期待

疑義照会が医師・患者に理解されるために

 3つめのテーマは地域薬局の役割。処方箋調剤だけでなく在宅医療やセルフメディケーションの支援,健康づくりへの取り組みなどが話し合われました。
 疑義照会を通じて医薬品安全に取り組む様子がビデオで紹介され,笠貫氏は「医療安全の基本は間違いを前提とすること。異なる職能がダブルチェックをすることが大事」と述べました。一方で「(疑義照会は)自分にクレームをつけられたという感覚の医師も多い。医師の意識改革が進まないとうまくかみ合わないのではないか」との懸念も示しました。
 日本薬剤師会常務理事の安部好弘氏は,「疑義照会は処方箋1枚だけでなく,薬歴や患者インタビューも合わせて行われている」ことを紹介しつつ,「患者からは見えていない場合がある」ことを問題視。さらに,「薬剤師の質によって照会の精度も違ってくる」現状も指摘しました。
 山口氏も「疑義照会はカベの向こう側で行われていて,薬歴を知らない患者も多い。薬剤師はこれらを知らせることで,役割が患者に見えてくるのではないか」とアピールの大切さを指摘しました。

安部氏

さまざまな連携で成り立つ在宅医療

 さらに,薬局薬剤師の活動として在宅医療の取り組みを伝えるビデオが紹介され,ディスカッションが続きました。
 松井氏は「高齢者は薬をちゃんとのめない状況がある。薬局薬剤師が患者に近い立場からサポートするのはいいこと。入院医療から在宅医療まで,切れ目のない薬剤師の介入を推進していかなければいけない」と述べました。笠貫氏は「チーム医療のリーダーである医師も,人的資源に限りがある。患者のニーズに応える医療のため,(医療チームの)信頼関係のなかで(フィジカルアセスメントなどを)できる人を作らなければいけない」と述べ,在宅医療での薬剤師の活動が医師の意識や医療システムの改革につながると見通しました。
 安部氏は「薬局の公共性から考えて,在宅医療への参画は必要」と強調しました。

「薬を生かすも殺すも薬剤師」へ

 最後に笠貫氏は「これまで,薬を生かすも殺すも医師次第,と医学生に教えてきたが,これからは生かすも殺すも薬剤師次第,という薬剤師に育ってほしい。真の意味の医薬分業のためのスペシャリストになってほしい」とこれからの薬剤師にエールを送りました。(MK)

シンポでは聴衆からの質問に答えるコーナーも設けられた
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