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このコーナーはMagPlusや雑誌の編集を担当するメンバーによるブログ。誌面だけでは伝えきれない話題をお届けします。

2012.03.26

医薬品等安全対策部会に注目

 3月23日に薬事・食品衛生審議会医薬品等安全対策部会が開催されました。
 薬食審と略称されるこの審議会には15の部会があり,医薬品等安全対策部会もその一つ。年に3回開催されています。
 そこでどのようなことが議論され,あるいは報告されているのか,23日の内容を元にいくつかご紹介したいと思います。

OTC薬のリスク区分の変更を決定する

 一般用医薬品(OTC薬)は,含まれる成分がリスクに応じて3つに分類されています。医療用医薬品から一般用となった,いわゆるスイッチOTC薬は,承認時点では最もリスクが高い成分を含む医薬品として,第1類に区分されますが,市販後調査の結果などから安全性を確認したうえで,リスク区分の見直しが行われることになっています。その区分の変更を最終的に決定するのがこの部会です。
 区分の変更に関する専門家の議論は「医薬品等安全性調査会」で検討され,そこで出された案についてはパブリックコメントを求めたうえで,同部会に諮られます。
 この日議論に上がったのは,医療用としても使われていなかった効能効果でOTC薬として承認された「ダイレクトOTC薬」を含む5成分が議論となりました。

肝斑治療に用いるトラネキサム酸は第1類に据え置き

 肝斑に用いるトラネキサム酸は,調査会から第2類に変更する案が出されていましたが,部会での議論の結果,第1類のまま据え置くこととなりました。
 この成分については,抗プラスミン作用があり長期連用(通常1~2カ月)に伴う塞栓症のリスク評価が不明で,因果関係不明ながら脳血栓や肺塞栓の副作用報告もありました。そのため,限度を超えた長期連用を避けることなどを注意喚起することで第2類にすることが調査会から提案されていました。しかし,部会委員からは「区分を下げて特別な配慮をするというのなら,区分を変えなければいい」との意見や,「2類になれば情報提供が努力義務になるので,(リスクを)言わなくてもよくなる」との懸念も示され,調査会提案を覆して第1類のままとなりました。

ミコナゾール硝酸塩の膣錠も第1類継続

 膣カンジダ症の再発時に用いられるミコナゾール硝酸塩膣錠は,調査会の提案どおり引き続き第1類となりました。再発を繰り返す人には使用しないなど、受診勧奨の必要性の判断が求められると判断されました。

ニコチンパッチも第1類を継続

 ニコチンパッチも調査会の提案どおり引き続き第1類となりました。副作用頻度の高さ、漸減など複雑な使用方法、漫然使用の懸念などから,薬剤師による情報提供が必要と判断されました。

フラボキサートは指定第2類へ

 女性の頻尿に用いるフラボキサートは,店舗での陳列方法などに制限のある指定第2類へと変更することが了承されました。これも調査会提案どおりです。妊婦や男性に禁忌であることを勘案し,販売方法に制限を加えることになりましたが,副作用は少ないと評価されました。

殺虫剤のリスク区分も議論

 殺虫剤の成分として用いられるジクロルボスは,調査会提案どおり引き続き第1類となりました。この成分は先日劇薬指定から外されましたが,長期的な影響の説明などが専門家に求められているとして,安全性の観点から薬剤師による販売が妥当とされました。

副作用報告の集計が報告される

 年3回開催される同部会には,4カ月ごとの医薬品副作用報告,医薬品による感染症定期報告が行われます。

OTC薬でも重篤な症例が

 医薬品の副作用報告は,医療用医薬品だけでなくOTC薬を使用した際の副作用も報告されます。報告数は圧倒的に医療用が多いのですが,OTC薬でも重篤な副作用が報告されています。
 解熱鎮痛薬、総合感冒薬による重篤な副作用は毎回報告されていますが,今回もスティーブンス・ジョンソン症候群(SJS)が2例,中毒性表皮壊死融解症(TEN)が2例,皮膚粘膜眼症候群が1例報告されました。また,ビタミンB1製剤でSJSの報告も1例ありました。

販売経路別の報告数も調査

 また,この日はOTC薬に関する副作用報告が,どのような販売経路で売られたものかを調査した結果が報告されました。
 2011年7月下旬~2011年11月に報告された副作用300例のうち,薬局・店舗販売業で販売されたものが60例、配置販売業が14例、ネット販売0例、通信販売1例、その他1例、不明159例でした。この数字については事務局の厚生労働省医薬食品局安全対策課から,「OTC薬の販売は約9割が薬局・店舗」であること,ネット販売は第3類のみ販売できることなどの留意点が示されました。
 しかし,部会委員からは「ネット販売でも,調査したうちの6割は第2類も買えた。それで報告ゼロはおかしいのでは」との意見も聞かれました。

「茶のしずく」によるアレルギー性副作用の集計報告も

 石鹸に含まれる小麦加水分解物によると思われるアレルギー性の副作用が大きな問題となった,「茶のしずく」(医薬部外品)の副作用の集計も同部会で報告されました。
 2月末時点で医療機関からの報告が219例、うち重篤例が54例(因果関係が否定できないもの22例)でした。製造販売業者からの報告は1,567例、うち重篤172例(因果関係が否定できないもの21例)でしたが,現在もこの石鹸による副作用症例の調査は続けられています。

日薬から薬局でのトリアージ例が報告

 また,この日は部会委員である生出泉太郎日本薬剤師会副会長から,日薬が「サポート薬局」から収集している,OTC薬購入希望者をトリアージして,疾病の発見につながった例などが報告されました。
 それによると,2011年7月~8月の約1カ月でサポート薬局433薬局から収集した1,184事例のなかには,経験のない便秘と吐き気から吐き気止めを求めてきた客に受診を勧めたところ,腸閉塞が見つかり手術した例や,狭心症の患者が腹痛を訴え来局した際に,受診を勧めたところ心筋梗塞であることが判明した,などの例がありました。

そのほかの報告事項

 この日はそのほかに以下の事項が報告されました。
 ・抗インフルエンザウイルス薬の安全性に関する調査結果
 ・ヨード造影剤の安全性に関する調査結果
 ・バイエッタ皮下注の市販直後等安全性情報収集事業の結果
 ・適正使用情報提供状況確認等事業の概要
 ・患者からの副作用報告システムの試行開始(3月26日から)
 ・ゲフィチニブの急性肺障害などの副作用件数の報告
 ・PMDAメディナビの登録件数の報告

ぜひ資料をご覧ください

 薬食審の部会は,後日厚生労働省ホームページで資料が公開されます。毎回,資料の量が膨大となる同部会ですが,副作用報告は詳細な内容となっていますので,ぜひご覧になることをお勧めします。(MK)

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