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このコーナーはMagPlusや雑誌の編集を担当するメンバーによるブログ。誌面だけでは伝えきれない話題をお届けします。

2012.10.19

【Report】海外のセルフメディケーション支援を学ぶ――日本セルフメディケーション学会


 第10回日本セルフメディケーション学会(年会長・福島紀子慶應義塾大学薬学部教授)が10月13,14の両日,東京・芝の慶應義塾大学薬学部で開かれました。
 13日午後のシンポジウム「諸外国から学ぶセルフメディケーション支援」では,英米豪の地域薬局の状況や医療のなかでのOTC医薬品の扱いなどが紹介され,日本でセルフメディケーションを推進するうえでの課題が指摘されました。

セルフメディケーションを進めるには医師と薬剤師の見解の一致が重要

 「英国のセルフケア支援とセルフメディケーション支援」と題して講演した松原薬局ストアの松原渚氏は,英国のNHS制度で受診制限があるために,それを補完するかたちで無料で医薬品を供給する「軽疾患スキーム」や,医療用医薬品のスイッチOTC薬化が進められてきたことを紹介しました。

●松原渚氏


 松原氏はさらに,これらスキームの適正な実施,OTC医薬品の適正な販売に必要なアセスメント能力を身に着けるために用いられる,「Minor illness or Major disease?」など薬剤師向けのテキストも紹介しました。
 このテキストについて松原氏は、「(症状に対する判断について)医師と薬剤師の見解が載っていることがポイント」と紹介。軽医療を薬剤師が行う際には「医師と薬剤師の見解が一致していることが大事ではないか」と指摘しました。
 また,スイッチOTC医薬品の現状について松原氏は,依然として医師の反対・懸念が強い医薬品もあることや,医療用では長期連用への懸念から使用を抑制する動きが出ているタムスロシンが,OTC医薬品では売り上げを伸ばしていることなどを紹介し,なお課題もあることを示しました。

アセスメント能力を身に着ける豪の軽医療マネジメント研修システム

 名城大学薬学部の坂巻弘之氏は、長野県・上田薬剤師会が厚生労働省事業として実施している生涯研修に携わる経験から,同研修の一つとして行っている,オーストラリアの軽医療マネジメント研修システムについて紹介しました。

●坂巻弘之氏


 オーストラリアでは大学のほか薬剤師会が軽医療マネジメントのスキルを研修する制度になっており,坂巻氏は「薬剤師が軽医療マネジメントに取り組むことが、セルフメディケーションの進展には必要」との見方を示しました。
 さらに坂巻氏は,薬剤師が軽医療マネジメントを行ううえで必要なものは、フローチャートやクックブックではなく、臨床判断できる力を身につけることだと強調。オーストラリアの教育研修はその視点に基づく症例ベースの研修であることを紹介しました。

薬局が医療の起点になる米国

 CJCファーマの陳惠一氏は、米国で病院薬剤師として勤務した経験を元に,米国の医療とOTC医薬品の姿を紹介しました。
 米国の場合,医療機関内で行われる保険医療でも処方箋薬とOTC薬が垣根なく使用されていることを示しました。背景にはOTC薬が処方箋薬に比べ安価であること、単味製剤が主流で処方箋薬と同様に使えることを挙げました。

●陳惠一氏


 また陳氏は、米国の地域薬局の姿も紹介。調剤だけでなくOTC薬も扱い、地域住民の相談にのる存在として位置付けられているとしました。その要因の一つとして、米国は古くからリフィル処方箋が主流で,受診なしに薬局で調剤を受けることが多いことから,「薬局が医療の起点になっている」と指摘しました。(MK)

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