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このコーナーはMagPlusや雑誌の編集を担当するメンバーによるブログ。誌面だけでは伝えきれない話題をお届けします。

2014.02.07

英国の薬学教育は医療用医薬品と一般用医薬品を分けていない
JASDI・P-co合同フォーラム

 日本医薬品情報学会(JASDI)と日本ファーマシューティカルコミュニケーション学会(P-co)によるセルフメディケーション合同フォーラムが1月26日,慶應義塾大学薬学部で開催されました。テーマは「英国に学ぶ 薬剤師によるOTC販売と適正なセルフメディケーションのための学部教育および卒後教育」で,英国の医薬品販売制度の紹介や,薬学教育,卒後教育が紹介されたほか,日本の薬学教育の課題や医薬品販売の実態などを踏まえたパネルディスカッションが行われました。

英国のセルフケアの考え方を紹介

 日本医師会薬務対策室の野村香織氏は,英国の医薬品販売制度,医薬品承認制度を紹介するなかで,英国の医師,薬剤師,看護師団体などで組織する「セルフケアフォーラム」が示す「セルフケアの連続性」を解説。同フォーラムでは個人の責任でセルフケアを行う「健康な生活」から,専門家の責任で行う「入院加療」までの間に「軽度の不調」や「長期的な病態」があるという連続的な概念で,そのなかで消費者が自ら不調を手当てするために医薬品などを用いることがセルフメディケーションであると説明しました。
 さらに野村氏は,英国の医薬品承認制度が「処方箋によってのみ提供される医薬品(POM)」,「薬剤師の監督下で提供される医薬品(P)」,「販売に制限のない医薬品(GSL)」に分かれており,法令上は医薬品の承認はP薬であることを想定しており,POMやGSLとするための基準がさらに設けられていることを紹介しました。
 また,英国でもP薬やGSLを購入するよりも,受診して処方箋調剤を受けるほうが安くつくという問題があり,一部の地域ではP薬に対し保険償還を行う仕組みも導入されているとしました。


野村香織氏

ニーズに基づく教育のモデルを紹介

 ユニバーシティカレッジロンドンの薬学部にあるFIPコラボレーションセンターに所属する荒川直子氏は,FIPが2013年9月に提唱した「ニーズをベースとする専門教育」のモデルを紹介。同モデルでは,専門職に求められるニーズを明確にし,それに基づいて薬剤師が行う業務・サービスを定義,それを提供する能力を身に着けるために必要なコンピテンシー(能力)を教育するという流れになっているとしました。また,大学教育がニーズに合うよう質の保証を行う仕組みも求めています。
 一方,薬剤師となってからの生涯教育の仕組みとして,王立薬剤師会は日本薬剤師会の「J-PALS」のお手本となったポートフォリオによる継続的な職能開発(CPD)を導入しています。これについて荒川氏は「職能の発展でなく免許維持の仕組み」,「ポートフォリオのうまい薬剤師ばかり残る」という批判的な見方もあることを紹介。これに対し現状のCPDは薬剤師資格の妥当性を評価するのに不適格との反省にたって,第三者評価の仕組みの導入が進められていると説明しました。


荒川直子氏

薬物治療のオプションとしてのOTC薬,医療薬

 演者に名城大学薬学部・小林大高氏,城西国際大学薬学部・山村重雄氏,ツカハラ薬局・塚原俊夫氏を加えたパネルディスカッションでは,フロアから質問された医薬品販売に関する英国の現状などについて議論を行いました。
 山村氏は英国の薬学教育のなかで,疾患について学ぶ際に薬物治療を教えるが,そこでは医療薬とOTC薬を区別しておらず,治療のオプションとして教えていることを指摘しました。また野村氏は,薬局がOTC薬を販売するだけでなくアドバイスも薬局のサービス,オプションとして位置づけていることを紹介しました。荒川氏は,医薬品販売に対する薬局のインセンティブが低下している現状を指摘する一方,王立薬剤師会は政府に対し,薬剤師が地域でサービスを行ううえでこのようなOTC薬(P薬)が必要,という要望を出していることも紹介しました。
(MK)


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