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このコーナーはMagPlusや雑誌の編集を担当するメンバーによるブログ。誌面だけでは伝えきれない話題をお届けします。

2013.07.26

薬剤師業務のトレンドを探る 学会取材総まとめ&雑感(前編)

 一昔前までは,薬学・薬剤師関係の学会は春と秋が中心でしたが,薬剤師の実務に関する学会の数が増えたこともあって,現在は季節に関係なく開催されるようになりました。それだけ薬剤師業務の幅も奥行きも広がっているのでしょう。
 今回は6月下旬から7月にかけて取材した学会・研究会のようすをご紹介しながら,最近の薬剤師のトレンドを考えてみたいと思います。

日本薬局管理学研究会

 日本薬局管理学研究会第8回年会が6月23日,東京・津田ホールで開催され,地域薬局からの6題の一般演題発表のほか,「保険薬局で薬剤師外来(サポート外来)を実践するために」をテーマにした時局講演,「薬剤師によるプライマリ・ケアとチーム医療」をテーマに特別講演が行われました。

薬剤師外来で処方提案をより有効に

 時局講演で薬剤師外来の実際について講演したのは,倉敷成人病センター診療支援部の今村牧夫氏。腫瘍内科医や緩和ケア医がいない医療機関でがん薬物療法を適切に進める観点から5年前から開始した,薬剤師による「がんサポート外来」のようすを紹介しました。
 今村氏は,医師の診断が済んで処方が決定してから疑義照会で処方提案をしても受け入れられにくいとし,患者が医師に受診する前に同外来で患者の状態や要望を聞き取り医師に情報提供することで,薬剤師からの処方提案が受け入れられやすいことを紹介しました。


●今村牧夫氏


薬剤師による臨床判断能力が求められる

 特別講演を行った昭和大学薬学部薬学教育推進センター教授の木内祐二氏は,薬剤師がOTC薬販売も含めたプライマリ・ケアで患者に関わるためには,患者の症候から適切に臨床判断する能力が求められると指摘。薬学教育で教えている症候学と臨床判断の実際を会場で再現しながら講演しました。
 木内氏は,医学・看護学で学ぶ標準的な医療面接で用いる「LQQTSFA」(Location:部位,Quality:性状,Quantity:程度,Timing:時間と経過,Setting:状況,Factor:寛解・増悪因子,Assocated manifestation:随伴症状)が,薬剤師の臨床判断に役立つことを紹介し,さらに一つの訴え(症候)からいくつ可能性のある疾患を想定できるかが大事になると述べました。


●フロアの参加者が挙げた症候から想定される疾患を紹介する木内祐二氏

日本ジェネリック医薬品学会

 日本ジェネリック医薬品学会が7月6,7の2日間にわたり,東京・昭和大学で開かれました。シンポジウム「医薬分業の理念とジェネリック医薬品」では,医薬品の処方と調剤の関係に関する新たな視点を提供する存在として,ジェネリック医薬品に対する薬剤師の取り組みが紹介されました。

成分・分量の決定は医師,剤形の選択は薬剤師

 シンポジストの一人である滋賀・パスカル薬局の横井正之氏は,ジェネリック医薬品の特徴である製剤の工夫について,医療従事者のなかでもっとも詳しいのは「製剤学,薬剤学を学んできた薬剤師」と強調。医療現場で起きている,患者が薬剤を飲めない問題を解決するためには,製剤学・薬剤学を学んだ薬剤師がジェネリックも含めた医薬品のなかで患者に最適な製剤を選択することだと指摘しました。
 また,同じシンポジストの横浜薬剤師会会長・向井秀人氏は,「医師の処方は成分名記載にして,剤形は薬剤師と患者が相談して行う」ことを提唱。また,その選択の結果として,患者が薬物療法を適切に遂行できているかを,薬剤師が気に留める必要性も指摘しました。

日本在宅薬学会

 日本在宅薬学会は7月14,15日の両日,大阪・新梅田スカイビルで開催されました。バイタルサインの取得,フィジカルアセスメントを薬剤師が行うにあたっての留意点に関する講演のほか,外来・在宅医療での薬薬連携などをテーマにしたシンポジウムも開催されました。今回は日本臨床腫瘍薬学会や日本アプライド・セラピューティクス学会などの協力によるシンポも開催し,より学会らしさの増した内容となりました。

薬剤師のフィジカルアセスメントに求められるもの

 弁護士の三輪亮寿氏は「薬剤師職能の確立に向けて,今こそ脇を固める」をテーマに基調講演。三輪氏は薬剤師が薬物治療に責任を果たすためにはバイタルサインの取得やフィジカルアセスメント能力が必要との見解を示す一方,チーム医療に関する医政局長通知などの行政の判断は,医薬品ネット販売の最高裁判決のように覆される可能性もあると懸念。薬剤師が患者や他医療職種から問題を指摘されたり,行政の判断が変わっても問題とならないよう「脇を固める」ために必要な要件として,①患者への同意取得は医師以上に慎重に行う,②バイタルサインチェックなど個人情報取得につながる行為は,その目的が診療ではなく医薬品安全の確保であることを明確にする――を挙げました。


●三輪亮寿氏

地域薬局と医療機関の連携の取り組みを紹介

 シンポジウム2「共同薬物治療管理と薬薬連携・がん外来化学療法」では,病院薬剤師と薬局薬剤師の情報共有に向けた取り組みが報告されました。これまでは「調剤された薬の情報を患者に伝える道具」という意味合いの強かったお薬手帳が,薬物治療中の問題や注意点などを,患者を介して医療従事者間で情報共有するツールとして使われていることが紹介されました。
 神戸低侵襲がん医療センターの和田敦氏は,前職である神戸大学医学部附属病院での取り組みを紹介。外来化学療法の情報を地域薬局の薬剤師と情報共有する観点から,治療スケジュールや薬剤の投与量,「すぐ連絡してほしい副作用」などをお薬手帳に記載しているそうです。
 東京女子医科大学八千代医療センター薬剤部の男鹿宏和氏は,薬局勤務経験を踏まえ,薬局薬剤師にどのような情報が必要かを考え,この7月から地域薬局と病院医師・薬剤師の連携研修会を開催することを紹介しました。内容は,院内で作成した情報伝達ツールの活用や改善などを予定しています。
 ミキ薬局の長久保久仁子氏は,麻薬処方箋の調剤をきっかけに病院で開催する緩和医療の勉強会に参加するようになった経緯を紹介。現在は薬局で「服薬サポートチェックシート」を作成し,薬物治療中の患者の状態確認を行い,医療機関へのフィードバックを行っているそうです。
(MK)



●学会会場のようす


後編に続く

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