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このコーナーはMagPlusや雑誌の編集を担当するメンバーによるブログ。誌面だけでは伝えきれない話題をお届けします。

2012.07.19

【Report】第15回日本医薬品情報学会学術大会

 第15回日本医薬品情報学会学術大会(大会長・松山賢治近畿大学薬学部教授)が7月7日~8日,東大阪市の近畿大学で開催されました。

●会場となった近畿大学

院内で医薬品安全の計画立案・実行を求める

 虎の門病院薬剤部長の林昌洋氏は,教育講演で病院内での医薬品安全に関する取り組みと医薬品情報との関連について語りました。
 同病院では,米国FDAが新薬承認時に医薬品メーカーに対して求めているREMS(risk evaluation and mitigation strategy)を参考に,新薬の院内採用時に起こりうるリスクを薬剤部で評価し,その対応策を検討する取り組みを行っています。林氏はアリスキレン(ラジレス)が欧米の場合,糖尿病患者でARBとの併用は禁忌になっているという情報をもとに,院内で併用の実態を調査しました。その結果,多くの患者でACEあるいはARBと併用している実態が判明したことから,代替治療があること,専門医以外からの処方が多いことなどを勘案し,「院内ブルーレター」などを作成して処方医と薬剤師が直接協議するなどの取り組みを紹介しました。また,リスク評価の際に医薬品情報や薬理学的な判断が求められることをあげ,医薬品情報学の重要性を強調しました。

●林昌洋氏

薬薬連携と情報共有でシンポ

 シンポジウム「薬薬連携下における情報の共有と提供」では,医薬品に限らない情報の地域共有の取り組みが紹介され,処方箋以外の患者情報を薬剤師が目にすることによる,薬局薬剤師の意識変化についての言及もありました。

病院薬剤師の指導履歴も薬局で閲覧可能に

 長崎県の基幹病院と地域の診療所・薬局を結ぶ「あじさいネット」を通じた患者情報の共有について,長崎県薬剤師会会長の宮﨑長一郎氏が紹介。入院中の患者に対する病院薬剤師の薬剤管理指導記録もネットを通じて見ることができ,宮﨑氏は「(薬局での)服薬指導の内容が若干変わる。その若干変わることが大きい」と評価しました。例えば,検査値の動きを見ながら病院薬剤師が薬剤の投与量調節を医師と相談した記録などを見ることで,処方内容の背景を理解できることなどをあげ,「継続的な薬学的管理,継続的な調剤が可能になる」とメリットを指摘しました。

お薬手帳持参率の低い年代に電子お薬手帳を

 アインファーマシーズ医薬事業部副事業部長の土居由有子氏は,同薬局が今年7月から全500薬局で電子お薬手帳による患者への情報提供を開始したことを紹介。同薬局が電子お薬手帳を積極的に導入する背景として,紙のお薬手帳の持参率が低い若い世代への情報提供手段として,スマートフォンを使った電子お薬手帳に注目していることをあげました。
 同薬局が独自開発したスマートフォン向け電子お薬手帳では,調剤した薬剤の履歴が記録されるほか,服用時間に合わせたアラーム機能や,服薬中に気付いたことを記録できるメモ機能なども備え,患者と薬局,他医療機関などとの連携ツールとしても使える可能性を示しました。

がん化学療法患者からの問い合わせをまず薬局に

 ファルメディコ株式会社の狭間研至氏は,要介護高齢者が病院外で薬物治療を受けながら生活していく超高齢化社会での地域医療について自説を展開し,地域医療の質を高く維持するために薬剤師の役割が重要であると強調しました。
 薬剤師業務のあり方について狭間氏は,「薬歴管理で終わりではなく,薬歴が次に来る処方箋を監査する準備であるべき」と指摘。また,次回処方までに薬剤師が患者の状態を評価して医師に処方提案をする「予診」の役割を提唱しました。
 また,がんの外来化学療法を受けている患者について,患者からの問い合わせがまず薬局に送られる仕組みを医師と薬剤師間の「プロトコル」として定め,薬剤師が初期対応を行うような構想を示し,そのなかで医師と薬剤師が共有すべき情報が何か見えてくるのではないかと見通しました。

A4用紙の半分が処方箋,残り半分に検査値情報

 福井大学医学部附属病院薬剤部の五十嵐敏明氏は,薬局薬剤師が処方監査や服薬指導を行う際に参考となる病院での検査結果を処方箋と同じ用紙に印刷し,患者や薬局薬剤師に情報提供している同院の事例を紹介しました。
 同院の外来患者に使用される薬剤のうち228品目について,薬剤の安全性に関連する検査値を印字するようにし,A4用紙の半分に処方箋,残る半分にお薬手帳に貼ることを想定した処方情報と,検査値情報を印字するようにしました。
 また,受け取る側の薬局がこれら情報を適切に評価できるよう,2カ月に1回のペースで「薬薬連携会議」と呼ぶ会合を開き,症例を提示してディスカッションする場も設けています。
 薬剤の安全性評価に関連する検査値に絞っている理由について五十嵐氏は,有効性に関する検査値情報の提供は処方医の理解を得にくいことをあげました。
 この仕組みを導入した結果,長期にわたって検査を受けていない患者が多いことに気付くなどの副産物もあったそうです。

●左から五十嵐氏,狭間氏,土居氏,宮﨑氏
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