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このコーナーはMagPlusや雑誌の編集を担当するメンバーによるブログ。誌面だけでは伝えきれない話題をお届けします。

2012.03.22

【Report】超高齢社会に向け薬剤師に求められるアセスメント力
臨床腫瘍薬学研究会学術大会イブニングセミナーで狭間氏

●手に持ったiPhoneで画面を操作しながらプレゼンテーションする狭間氏


 3月17日と18日の2日間にわたり臨床腫瘍薬学研究会(遠藤一司会長)の第1回学術大会が都内で開催されました。初日午後のイブニングセミナーでは,狭間研至氏(ファルメディコ株式会社)が「薬剤師が取り組むフィジカルアセスメント~CDTM実践に向けた戦略的アプローチ」と題して講演し,超高齢化社会に向けて進む在宅医療中心の医療体制のなかで,薬剤師が果たす役割について在宅医療に取り組む医師の立場から講演しました。

2025年には「死に場所」が足りない

 狭間氏は在宅医療重視にシフトする背景として,超高齢社会のなかで,高齢者を看取る場が医療機関では不足する見込みを指摘し,在宅での死亡を40%に引き上げる方針で行政施策が進められていることを紹介しました。また高齢化がピークを迎えると予測される2025年には,現在死因で高い順位にある心疾患,脳血管疾患が直接の死因としては減っていくとの見通しを示し,これら疾患の後遺症や合併症を抱えた患者,増加傾向の続くがん患者を在宅でみていくことになると見通しました。

2025年の薬剤師の仕事は

 また,在宅医療が進むなかで薬剤師が医薬品のデリバリーだけでなく服薬支援,治療の個別最適化を行うことも求められると述べ,薬剤師がオーダーメード医療に役割を発揮するよう求めました。具体的には,患者の服薬後の状態を,バイタルサインをとって観察したり,その値をアセスメントして医師の次回処方時に活かすよう意見を言うことだとしました。
 現状では処方内容に疑義を感じて処方医に照会しても「そのまま出しておいて」といわれるケースもあることについて狭間氏は,薬剤師が根拠となる患者情報をもたずに照会していることの問題を指摘。「(処方量が)多いと思ったら(患者宅に)確かめにいく。自分が調剤した薬が果たしてそのままでよかったのか,見に行ってもらいたい」と語り,薬剤師が調剤後のフォローアップと次回処方に向けた提案をするために,患者の状態を詳しくアセスメントする必要性を強調しました。

アセスメントは目的ではない

 一方,狭間氏は薬剤師によるバイタルサインのチェックがややもすると目的化してしまう点も懸念。「薬剤師さんはまじめだから上手に(バイタルサインを)とろうとして,それが目的化していないか」と語り,患者の状態をアセスメントする目的でバイタルサインをチェックしていることを意識するよう求めました。また,バイタルサインは1回の測定ではなく一定期間の経過をみるものだとし,数値を「トレンド」として把握するなどのポイントも示しました。

●途中で参加者がお互いの脈拍をとる体験も

米国のCDTMから日本の「共同薬物治療管理」へ

 狭間氏は,医師や薬剤師など多数のプロフェッションが一人の患者をさまざまな視点でみていくことに意義があるとし,医師と薬剤師による共同薬物治療管理の考え方を紹介しました。ただし先行している米国のCDTM(collaborative drug therapy management)については,「崩壊している米国の医療を導入する必要はあるか」と否定的な見解を示し,「(日本の実情に合わせ)解釈しなおせばいい」と日本独自の共同薬物治療管理の概念の構築を求めました。
 さらに,狭間氏は日本の共同薬物治療管理の構築に向け「信頼できる薬剤師には患者を理解してほしい。そのときの共通言語がバイタルサインになる」と述べ,患者の経過を数値で語り合う関係の醸成を求めました。

在宅はITで情報共有

 狭間氏は,在宅患者のバイタルサインをチェックする仕組みで,IT化が進んでいる現状も紹介しました。患者につけた電極から心電図を測定し,医師のスマートフォンに波形を送るシステムを紹介しながら,「患者に対しよりよい医療を提供するために,薬剤師もこういったデータを見るべき。医師と薬剤師が併走しながら患者をみて,医師が処方について質問したら返答してくれる」という関係の実現を求めました。

アセスメントがキーワード

 狭間氏はこれら理想的な医療の姿の実現にむけ,薬剤師が患者の状態をアセスメントすることがきっかけになる,との考えを示しました。アセスメントは患者の状態把握だけでなくセルフメディケーションの現場でも求められると指摘。医療薬のスイッチOTC薬化に医師が反対しているのは「薬剤師が患者をアセスメントしていないという前提で反対している」のだと説明しました。ただし,そういった前提が崩れればセルフメディケーションはプライマリケアの一つに入っていく,との見通しを示し,薬剤師がアセスメント能力を高め薬局でのプライマリケアを確立するよう求めました。(MK)

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